内容説明
小学校、旧制中学、就職先の放送局で庄野潤三の後輩として過ごした阪田寛夫は、いつしか庄野文学最大の理解者となった。習作から刊行当時の最新長篇、そして随筆集までも順に丁寧に読み解くことによってのみ、鮮やかに見えるその豊穣な世界――正確かつ簡潔でありながら深い愛情に溢れる筆致が、読む者を思わず感動へと誘う。類まれな作家論の達成。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
こうすけ
17
すっごく面白かった。庄野潤三がまた読みたくなった。しかし結構長い間、テレビ局員として働いていたのか。意外。2025/07/28
Inzaghico (Etsuko Oshita)
3
放送会社に勤務しているときでも、庄野は堂々と「作家」と名乗っていた。阪田は、「庄野さんにとっては作家であることが、自分の本質にかかわる唯一の方法だったのだ」と分析している。身過ぎ世過ぎと本質の違い、ということだろう。背筋が伸びる。 大事件が起こる小説も面白いけれど、平々凡々とした営みに生まれるささやかな幸せを描いた小説はしみじみと味わい深い。ぞわりとした凄みのある初期の作品群も読もうと思う。2018/08/02
yoyogi kazuo
1
庄野潤三と個人的な付き合いのある作家・評論家による作家論・作品論。昭和49年(作家54歳)ころまでを対象にしている。もともと小説は好きではなく、チャールズ・ラムの随筆のような文章を好んでいた作家が、伊藤静雄、佐藤春夫らの影響を受けて独自のスタイルを確立するまでの軌跡が描かれる。「愛撫」「舞踏」「プールサイド小景」を経て「ガンビア滞在記」から「静物」に至り、「夕べの雲」で完成された世界に行きつくまでの過程が丁寧に論じられている。2022/05/14
はるたろうQQ
1
晩年の作品を待ちわびて愛読し、遡って庄野潤三を読んだので、初期の「プールサイド小景」等には戸惑った。同じく日常生活を描くが、初期はその底にある不幸や不安が主題で、晩年は静謐な日常生活のみを描きその底にあるはずの死への不安を描かない。この点で本書は晩年の作品群が出る前に書かれたものだが、「紺野機業場」を一つの転機としているのが参考になる。また「前途」も読む必要がある様に感じた。なお、あとがきで「ザボンの花」が好きだった著者の母が死んで分かったことがあるとある。著者の「土の器」を再読した方が良いかもしれない。2020/01/09
qbmnk
0
庄野潤三の本を一冊も読まずに本書を読んだ。阪田寛夫の「土の器」を読んだあとで、初めは同時代の私小説論として興味深く読み進めていたが、だんだんと阪田寛夫から見た庄野潤三とその作品解釈の解像度が上がり、庄野潤三の作品を全て読みたくなる衝動がわいた。作家の文学者としての形成過程も丹念に描かれていて、作品が時代や生活を描きながら人間に対する射程の長い洞察を含んでいることを知らしめている。最後に庄野潤三の随筆と阪田寛夫のあとがきも加わり、作家同士の交流が2人の鮮やかな筆致で現在進行形で示されているのも楽しい。2025/03/08
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