内容説明
妻の顔が、むかし捨てた女の顔になっていく!
平田篤胤「仙境異聞」の天狗小僧寅吉が見た人間の業、病理とは!?
妻と娘の3人で暮らすマイホーム。幸せを手にしたかに思えた俊男だが、いつしか希望は失われ……。
そんな時、妻の静佳の顔が変わっていることに気づく。整形を繰り返す静佳は、若い頃に捨てた女・あゆみとそっくりに!?
(表題作「貌孕み」)
幼い頃、天狗にさらわれ仙境で暮らした童子・天狗小僧寅吉こと嘉津間。
平田篤胤は嘉津間の話をまとめて「仙境異聞」を著したが、やがて嘉津間は忽然と姿を消した。
その15年後、嘉津間は再び篤胤の前に現れ、時空を超えた旅の中で見た、人間たちの深き業が渦巻く魔境の有様を語り始める――。
平田篤胤の「仙境異聞」に材を取り、現在の人間社会をあえて“魔境”と捉えた、著者ならではの超異色ホラー作品。
〔収録作〕「太祖墓陵」「猫女」「童翁」「鬼母神」「火札」「貌孕み」「妖魔」
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はつばあば
57
平田篤胤さん・・江戸時代の国学者とは存じておりましたが、なんと!神道家・思想家・医者。復古神道(古道学)の大成者でありオカルト研究までも?と。嘉津間を通して語られる魔境の世界・・とは言っても我々の世界であるわけですが切ない現実です。未来は白い煙の中・・2020/03/23
まさきち
39
嘉津間を通して江戸時代の平田篤胤達に語られる現代の狂気を集めた短編集。坂東眞砂子さん独特のおどろおどろしさは堪能できたのですが、いまいち構成が手の込んだ感があり素直に絶賛できない感じでした。でも最終話の「妖魔」が少々ラブストーリー的要素が強くて読後感はほっこりした感じですかね。2014/11/26
いたろう
37
久しぶりに昔のような本当に怖いホラー作品かと思ったのに全然ホラーではなかった。現代の話の中に江戸時代の物語がでてくるのならまだわかるが、江戸時代の話の中で現代の物語が語られる不可思議。自動車という自力で動く車が走る魔境の話として。そして、まさかのタイムトラベル&近未来SF? ただ、そんな新機軸も、かつてのホラー作品の圧倒的な迫力からみると、軽い感じで何だか物足りず・・・。図書館で借りてきて、読もうと思っていた矢先の突然の訃報。この本が最後の本になってしまったとは。残念でならない。2014/02/05
らむり
26
SF的な要素は無くても良かったような。。魔境の場面は面白かった。2013/10/18
マドリン
20
舞台は江戸時代、平田篤胤の弟子である嘉津間が、数々の時代を越えて見聞きした人間模様の数々。どの時代にも人間の深い業が見られる。時代も場所もバラエティーに富んでいて非常に面白かったです。そして最後に明かされる嘉津間の正体に、胸がグッとなりました。こういうラストは好きです。2022/05/11