内容説明
リアリティと非現実感が交錯する! 竹本健治が連載を始めた本格推理に、いつのまにか埼玉で起こった女性連続殺人事件の、犯人を名乗る男の手記がまぎれこんでいた!現実と虚構の境界線はあいまいになり、事件は思わぬ展開に。私たちが暮らすこの世界もどこからどこまでが現実なのか、次第にあやふやになってくる、奇々怪々な超ミステリ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
65
上巻に引き続いて、著者の日常、ミステリ小説、殺人鬼の手記が交互に描かれていくのだが、本巻においてはそれがより一層混迷の度を増していく。こういうのはお互いが絡み合って話が進展していく事が多いのだが、本書においてはそれぞれのパートで言ってる事が矛盾し、それでいて読者の立場からは真偽が断じ難いので、それも混迷の一因。ラストはこういう形でなければ収まりがつかないのはわかるけど、どうも座り心地が悪く感じた。あ、島田荘司や綾辻行人が出てきての洋館での推理合戦は面白かったです。実在するあの有名作家、殺されちゃったし…。2023/06/17
おうつき
22
後半部分は頭がパンクしそうになってしまった。「読者への挑戦」ならぬ「読者への忠告状」が挟まれてからかさらに加速していく現実と虚構の交錯。一般的なミステリーにおける解決はもらたされず、読み終ってもモヤモヤとした感覚が残った。解説で触れられている通り、メフィスト賞でデビューした作家に多くみられるアンチミステリーにも受け継がれているのかな。「基礎論」に続きたいけど、どっと疲れてしまいそうなので少し間を開けてから読もうと思う。2020/06/06
マッピー
15
上巻が面白かっただけに、広げた風呂敷をさらに広げたままで終わってしまったのが残念。作者がやりたかったのは、そんな、小説的整合ではないことはわかっているけれど。そして、どうしても納得のできない、恐喝のネタ。暴かれるといやだからといって、殺すことはない。一生恨むことはあっても。そして隠しおおせる謎でもない。今時、それはニュースにならないわけがない。ところが、最初の殺人の動機はいったいどこから湧いてきたのだろうなんて考えてみたら、実は最初の出来事は最後の告白とつながっているのか。つまりウロボロスの環ってこと?2023/08/29
浮遊
13
真偽を定めるのは誰か。どこで線引きがされるのか。各々に真があり偽があり、人の数だけ真偽の判決は下る。多くの事象が重なり合い容量過多で枠が壊れた時点で、アイデンティティも同時に崩壊する。そもそも前提からしてこの作品世界は崩壊しているのだけど。なのに止められない。ページをめくる手が止まらない。分からなさが気持ちよさに変わり、ただの目撃者であることだけが自明となる。小説は終わらない。ウロボロスは止まらない。そこはそれ。これこそが正しく偽書である。2018/05/21
なべさん
11
私が竹本さんとのであいは匣だったので、匣までは驚くことはなかったけど、匣より複雑化して何が何だか分からなくて読み終わってしまった。こういう現実にいる小説家の人たちが物語に入ることで、現実と虚構を混ぜ奇妙な感覚にさせる技は竹本さん独自の感性で、結構お気に入りです。私は。ただ、人には紹介出来ないなぁって思ったり。2018/05/05