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内容説明
現代日本人の意識の深層は江戸時代と地続きであることが明らかにされつつある。したがって江戸の思想を支配していた三教――神道・儒教・仏教――にこそ、我々の内面の問題を解く鍵がある。幕藩体制に組み込まれた仏教。近世の思想界において主導的立場に立った儒教。国学の勃興と明治維新のイデオロギーとして機能した復古神道。これらはいかに交錯し、豊かな思想の世界をかたちづくっていたか。我々の基盤になっている思想の原風景を探訪し、その再構成を試みる野心作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Vakira
21
日本にある宗教を知りたく手に取る。神道は地縁・血縁などで結ばれた共同体(部族や村など)を守ることを目的に信仰されてきた。だから部落毎に神は異なり各々を主張する。日本国全体を治めるためには国としての統一した宗教の存在が必要であった。それが仏教。聖徳太子が推奨。仏教はおもに人々の安心立命や魂の救済、国家鎮護を求める目的で信仰されてきた。やがて中国から仏教以外に儒教も導入。これが武士社会にマッチング。人間社会でのコミュニケーション。両親、年上の人、自分の仕事上の上司を人生の先輩として敬う。孝とか礼を重んじる。2018/10/15
俊介
18
中世までに完全に日本に溶け込んでいたために、幕府の支配体制に組み込まれてしまった【仏教】/支配イデオロギーとして幕府を支えると同時に、「正統性」を重んじる水戸学などから尊王攘夷運動にも繋がった【儒教】/国学者などから、純粋な日本のあり方として評価され、近代ナショナリズムを醸成した【神道】/江戸時代の思想地図は、基本この三つ巴の戦いだった。だが本書を読んで抱いたのは、この三つに、そこまで根本的な違いはなかったのでは?という思いだ。例えば仏教側だって尊王的な考え方は持っていた。もっと仲良くできなかったのか…笑2020/09/22
さとうしん
12
江戸時代宗教・思想史総覧的な本。個人的にその人単体の思想や活動でしか知らなかった富永仲基や不干斎ハビアン、隠元がどういう歴史的文脈で位置づけられるのかという話を読めたのが収穫。国学が古典文学の研究の範囲で収まることなく文献の外、すなわち現実の世界へと飛び出した結果どういう作用をもたらしたかという話の進め方、神話を歴史と結びつけて古代史の真実を明らかにしようとする「誘惑」が現在でも根強く残っているという著者の呆れが印象的。2018/11/02
かんがく
9
江戸時代に三教とされた神道・儒教・仏教について、様々な思想家の考えを引用しながら概説。キリスト教や蘭学、国学、尊王思想などとの関係、明治維新にいたるまでの思想などについても触れられる。卒論で扱った範囲なので、改めて復習といった感じで読んだが、第十章の「歴史と宗教」についてはそれぞれの宗教が日本の歴史をどう捉えたか書かれており面白かった。2018/06/03
kawasaki
8
在家仏教協会の機関誌という、思想史方面に意識を向けた読者の多そうな雑誌への連載をまとめたもの。神儒仏三教の思想と、その社会的位置づけが複雑に絡まり合い、批判したり融合したりしながら発展していった江戸思想史をかなり詳述しつつ、新書一冊に収めた本。初めて知る思想家も多く、興味深かった。2019/10/08