内容説明
毒婦の涙か、それとも聖女の涙か――。
依頼は単なる人探しだった。すぐに解決すると思い込んでいた依頼だった。しかし、事態は急転直下、槙野の忌まわしい過去へと繋がり、迷宮の如き様相を呈し始める。
「卒園者を探していただきたいんです。名前は五十嵐靖男」
児童養護施設の園長から依頼を受けた探偵・槙野康平は、五十嵐が昨年結婚し、今夏に亡くっていることを調べ上げる。しかし、五十嵐の妻に会いに行った園長が何故か罵声を浴びせられて門前払いされたことから、槙野は園長から新たな依頼を受けて五十嵐が失踪した理由と死因を調べ始めるのだった。そして突き止めた予期せぬ結果に警察の介入が必要と結論し、警視庁捜査一課の東條有紀に情報提供するのだが――。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いつでも母さん
167
このタイトルだし、吉田さんだし・・ざわざわするのかと気を張りつつ読んだが、刑事事件の推理もので、槙野・東條シリーズでした。東條さんの恋はちっとも進展がなかったけれど、探偵・槙野は自分の過去との清算になって良かったと思う。事件は人探しから始まったのだが、とにかく登場人物が多く（汗）あちらの事件とこちらの事件が絡んだり、計画殺人のからくりや、戸籍乗っ取りなど気になって一気に読んでしまいました。私は今回もまんまと騙されてしまい、探偵にも刑事にも向かないのがハッキリしました。2018/05/16
🐾Yoko Omoto🐾
143
プロローグで槇野が現職の刑事だった五年前の事件が描かれ、これがどう現在に関わってくるのか、槙野の過去に決着をつける事件とも言えるシリーズ５作目。同じ死因で立て続けに二人の夫を亡くし、高額な保険金を手にした女、宿泊先のホテルで夫が惨殺され失意にくれる女。まるで繋がりの見えない複数の事件を、探偵槙野と東城刑事それぞれの視点から追い真相に迫る、シリーズの醍醐味を堪能できる良作。シリーズお馴染みのオカルト・グロ要素は無かったものの、驚きのトリックと、終盤のお約束でもある犯人の長舌独白(笑)は健在。面白かった。2020/05/06
おたけஐ೨💕🥒🍅レビューはボチボチと…
96
85/100点 槙野・東條シリーズ５作目。今作は前作以上にミステリー色が強い作品になっています。複数の別々の事件が複雑に絡みあう前半からグッと心を掴まれ、気がつけば面白く読み終えることが出来ました。これまでシリーズの中にあったオカルト色がこの作品では一切なく、純粋に本格推理小説として勝負している点に好感を持てました。ただトリックや動機については少しおかしいなと思う部分があった点と、今作で何らかの説明があると思っていた新人探偵の早瀬さんの過去の説明が無かった点が少し残念に思いました。2018/04/07
aquamarine
92
シリーズ5作目。オカルト的要素が印象的なシリーズですが、今回は槙野が警察をやめたときの事件が絡み、オカルトではなく至極普通のミステリになっています。警察側、探偵+弁護士側、とそれぞれの役割分担がすばらしく、違う形で事件に迫り、目が離せないまま一気に読み進めることになりました。このメンバーだからこそ、この複雑な事件の絡みがほどけたのですね。槙野の過去は一応清算されたということになるのでしょう。楽しみましたがどうしてもこのシリーズはオカルト要素を期待してしまいます。続編がどんな形になるのか今後も楽しみです。2018/07/09
ﾓﾙｸ
87
シリーズ５作目でありながら、今回はオカルト要素が全くなく、トリックミステリーに徹している。行方不明者の依頼から、槙野の警察官時代の汚点に関わる事件にまで波及する。こんな複雑なトリック、なかなか実行する人も、そこに追及をたどり着く人もなかなかいないと思うが、これも東條の洞察力の深さであろうか。その意外性がおもしろかった。著者の一本釣り漁師の経歴が物語る漁船トリックなど、とてもいかされていた。さて次は、東條の姉の事件の追及かな。まだまだ続きそうで楽しみ。でもオカルトも入れて！2018/07/14
