内容説明
問題作復活! 落語界を揺るがした大事件。
師匠に翻弄される弟子たちの悲哀と混乱、そして敬愛と憎悪のすべて。
「もう決めた、あたしゃ、伝家の宝刀を抜く!」
昭和53年、名人・三遊亭円生は、柳家小さん率いる落語協会の真打ち量産体制に異を唱え、一門を率いて協会を脱会した。
この騒動に落語界は大揺れし、円生の弟子たちは翻弄された。
当時、自身が見た真実をどうしても書かずにおられないと、弟子の一人で騒動の最大の被害者でもある円丈が書き上げたのが、本書である。
見たまま、感じたままを、忖度なく実名で書き綴った赤裸々な本書は、刊行当初、世間を騒がせ、関係者を困惑させ、あるいは激怒させた。
その問題作を、30年あまりの時を経て復刊した。
この間、立川談志、古今亭志ん朝、先代三遊亭円楽ら、登場人物の多くが鬼籍に入った。一方、本書の文芸としての価値が見直された。
文庫化にあたって、後日譚を書き加え、さらに三遊亭円楽・小遊三両師をまじえ、騒動のその後を語った「三遊鼎談」を収録した。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
fwhd8325
84
この騒動で印象に残っているのが、志ん朝。あのなんと言えない悔しそうで寂しい表情は、この著書を読むと一層突き刺さるようで痛々しい。巻末の鼎談で現在の円楽がどちらからも見方があるようなことを語っているけれど、いまだに圓生の名跡を継ぐことができない現実と重ねてみるとどちらにも根深い蟠りがあるのだと思います。落語界のためを思うと活躍の場が限られてしまった噺家ほど哀れなように思います、それは落語ファンにとってもマイナスでしかありません。2021/03/02
りつこ
32
あくまでもこれは円丈師匠の目から見た落語協会分裂事件ではあるけれど、でも当時全て事後報告でただただ翻弄されるばかりだった円丈師匠が「いつかこのことを書いてやる」と思って書いたこの執念。そしてただの暴露本のようなものではなく、読み物としてちゃんと面白いことに感動。何の後ろ盾もない状態で協会に復帰してから新作を作り続け今に至るということがわかってるだけに、凄いとしか言いようがない。これを読んで一番喜んだのが先代の小さん師匠だったっていうのがまた面白い。楽しかった~。2018/05/12
えみ
30
円丈師匠から見た三遊協会の分裂騒動を過激に暴露している。円丈師匠がその時感じたことが臨場感あふれて伝わってくる。円丈師匠の本は初めて読んだが、とても面白くあっという間に読み進んでしまった。出版したての時の当事者たちの反応が追加されてたり、巻末の円丈師匠×当代円楽師匠×小遊三師匠の鼎談も興味深く面白い。2019/02/08
かんちゃん
30
寄席や落語会で、先代圓楽一門の落語を楽しませて頂く機会がある。実に楽しい。面白い。この本に触れるまでは落語協会に騒動があったことさえ知らなかった。とはいえ、読む前と読んだ後とで何か変わったかと言えば、何も変わらない。相変わらず落語は好きだし、面白い。人間が集まれば、喧嘩もするし、仲直りもする。いろいろあるだろうけど、これからも落語という芸がずっと発展したらいいね。楽しめたらいいね。そういうことだ。2018/07/17
タツ フカガワ
29
1978年、真打ち大量昇進に端を発する三遊亭圓生一門の落語協会脱退騒動の内情を明らかにして,ベストセラーとなった本の33年ぶりの復刊。41年前のこととはいえ、ここまで書くかという生々しい内容です。時代小説でお家騒動はいろいろ読んでいますが、本書は格別の面白さ。なにしろ読み物としてよくできています。2019/05/30