内容説明
アシャ(日本名「朝子」)という女性のことを知る者はそう多くないだろう。アシャは1928年、神戸を拠点にインド独立運動を展開していた父サハーイと母サティの間に長女として生まれた。サハーイは、日本におけるインド独立運動のなかでは「中村屋のボース」ことR・B・ボースに次ぐ存在で、「自由インド仮政府」の閣僚を務めた人物でもある。
神戸の小学校を卒業後、昭和高女(昭和女子大学の前身)在学中に来日したチャンドラ・ボースに感化されてインド独立運動に身を捧げることを誓ったアシャは、インド国民軍(INA)に入隊することを決意。1945年5月、バンコクにあったINA婦人部隊に配属されるも、日本の敗戦により活動は終了してしまう。その翌年、シンガポールで父と合流したのち、アシャは生まれて初めて祖国インドの地を踏んだ――。
本書は、本人と関係者へのインタビューのほか、未公開の日記や回顧録など貴重な資料を駆使し、一独立運動家の目で見た戦前・戦後の日印関係を再構成。日本で生まれ育ち、若くしてインド独立運動に身を投じたアシャとその家族の数奇な運命を通して、気鋭の研究者が日印関係史に新たな視角をもたらした傑作である。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
星落秋風五丈原
25
本人と関係者へのインタビューや手紙や歌などが紹介され明確でない部分は想像で補われている。韓国を併合し中国に傀儡政権を建てた日本は、同じアジア圏の国から侵略側として憎まれる一方だと思っていたため、英領であったインドが、日本にかなり期待と好意を寄せていたことが意外。別の視点から見れば、帝国主義で次々と植民地支配を進める西欧に対して、ただ一国独力で対抗できるアジアの国にも見えたわけだ。日本がインドの独立に対してどれだけ本気だったかはわからないが、東条英機首相と面会して意気投合し、インドで日本軍と共に戦っている。2016/05/06
バッシー
2
中村屋のボースなど来日したインド独立運動家は広く知られているが、その家族がどのような人生を歩んだのかはほとんど知らなかった。ネタージやガンディーなど著明な独立運動家たちも、本書の主人公「朝子」のエピソードを通してみると、歴史上の人物にとどまらない生身のリアリティをもって浮かび上がってくる。インド国民軍婦人部隊の内側も興味深い。運動家たちはイギリスからの独立だけでなく、「インド」を作ろうとしていたことに気づかされた。2024/06/22
みぽ
2
2016#75 中村屋のボーズについて読み知ったので、その流れでこの本を。インド独立運動にも、様々な形態があって、また一つ違った視点で見ることができ、理解に奥行きができた。日本で産まれ育ちながら、インド独立に奔走する両親のもとに育ち、祖国への思いを強めていく朝子。兵士として、日本を離れた後、日本を訪れたことがないようだが(インドで結婚したので、容易でなくなったのだと思うが)独立を果たした後もインドに留まることに苦悩はなかったのか。彼女のアイデンティティはどのようなものなのか。今のインドをどう思うのか。2016/12/01
takao
1
ふむ2020/12/17
Hirochan
1
波瀾万丈、よくもあの戦火動乱期を生き抜きました。2016/09/26
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