内容説明
「哲学と文学とは根本において同じ問題をもっている。そのような問題は、例えば、運命の問題である。自由と必然の問題、道徳と感性との対立の問題である。」哲学者にして評論家の三木清はまた、稀代の文芸批評家でもあった。批評論・文学論・状況論の三部構成で、その豊かな批評眼を読み解く。
目次
I 批評論
II 文学論
III 状況論
初出一覧
解説 大澤 聡
年譜 柿谷浩一
感想・レビュー
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tieckP(ティークP)
4
似ているのはパスカルで、パスカルほど天才ではないが、一つの思想についてだけは無批判で受け入れつつ、その他の点においてクレバーに論理を操作する点が非常にそっくり。パスカルはキリスト教で、三木はマルクス主義。もちろんその「無批判」はそれぞれ常人を超える程度で批判しきったうえでの態度なのだが、一度信じると決めたら徹底してその措定した補助線を利用し尽くすところがある。この点から「文芸批評」としては、プロレタリア文学の失敗を認めつつ、その再生を論理付けようとあがくのだ。解説の小林秀雄との関連の説明も読みごたえある。2018/03/03