新潮クレスト・ブックス<br> 昏い水

個数:1
紙書籍版価格
¥2,530
  • 電子書籍
  • Reader

新潮クレスト・ブックス
昏い水

  • ISBN:9784105901448

ファイル: /

内容説明

知的で辛辣、自由を重んじ、七十代のいまも仕事のため遠方まで車を走らせるフランチェスカ、病床にあるどこか憎めない元夫、高級老人ホームで悠々自適の女友だち、恋人を突然亡くした息子が身を寄せるカナリア諸島のゲイの老カップル……。いかにも英国的なユーモアをちりばめながら、人生の終盤を生きる人々を描く長篇小説。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ケイ

140
70歳の主人公フランチェスカ。車を走らせてイングランドを周り収入を得ている。別れた最初の夫には食事を届け、患う友達は労る。友達夫婦も、息子が仕事先のスペインの島で会った夫婦らも、それなりに元気だ。死んでいく人も、それを受け入れる。描くのは、80歳の作者。冒頭で、運転しながらフランが呟く言葉がこの作品を貫いている 「棺を覆うまで、その人の幸せは定まらず」 「夭折は(この場合は30代だけど)、老化やそれに伴う気力体力の衰えを経験しなくてすむ」 まさにその通りだわ、と老女からもらう元気。2018/07/28

キムチ27

59
回数は多くないけれど、ブリテン島の滞在で見た高齢者は夜遅くても一人でパブに入り、大きな皿の羊肉を平らげ・・そのエネルギッシュさに仰天した思い出がある。この作品を読んであの風景が甦る。80歳になんなんとするフランが持つ引き出しの量にも圧倒された。住まいである高層住宅はエレベーターが頻繁に停まるのに階段を上がり降りするのも平っちゃら。別れた夫や寝たきりの元医師、友人のところへ~日々じっとしていられないんだろうね。登場する社会環境はほぼ中流階層・・上がる話題の内容にも肝を潰す・・文学・美術・音楽。単なるゴシップ2019/11/18

りつこ

39
まだ大丈夫、いやそろそろヤバイかも?と自分の老化を冷静にはかりながらも、働くこと移動すること動き続けることをやめない主人公フラン。あっけなく老人向け施設に入った親友、老人になってから再会した幼馴染み、カナリア諸島に移住したゲイカップル。様々な視点から老いること、生きること、そして死ぬことが語られる。こんなにリアルで、それなのに楽しい老人小説は初めて。散りばめられたユーモアにふふっと笑い、なんかそれわかる…と苦い気持ちになり、それでも最後までこうやって生きていくのだ!とちからをもらう。面白かった~。2018/04/17

ヘラジカ

33
老いのなかで人生最後の日々を過ごす人々を描いた群像劇。社会階級の高い知的な人々の暮らしは、安穏としたものだがどことなく倦怠感や虚しさを感じさせる。それだけに読んでいて楽しい本だとは言い難い。正直に言うと退屈にすら感じた。でもこの退屈感こそが、最後のステップに足をかけた人の生活なのだと思うと、ため息が出るような切なさも覚える。結び前最後の「行きぬくことしか選択肢はない」という言葉が読み終えてしばらくたった今も胸に残っている。難しくも充実した読書であった。2018/03/01

信兵衛

27
人生の終盤とはいえ、まだ生きているんだという開き直りにも似た強い気持ちが感じられますし、そうしたところにちょっぴりユーモアがないではない。2018/03/31

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/12636546
  • ご注意事項