内容説明
変わった名前をもつ大学院生、中央(あたり・あきら)。彼はちょっとレトロな撞球場「ビリヤード・ハナブサ」でアルバイトをしている。ビリヤードの腕前は一流、経営手腕は三流の英雄一郎(はなぶさ・ゆういちろう)先生がオーナーの店には、個性的な常連客たちが集う。おしゃべり好きな彼らは、仲間内の誰かが事件に巻き込まれると、プレーそっちのけで推理談議を始め、みな素人探偵となって謎を解こうとするのだ。けれど結局事件の真相を言い当てるのは、アルバイトの中央の役割で?! そして今日もまた不思議な事件が持ち込まれ――。現代の『黒後家蜘蛛の会』登場。第24回鮎川賞受賞作。/解説=福井健太
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
toshi
48
2014年のデビュー作で、鮎川哲也賞受賞作。ビリヤード・ハナブサという店のアルバイト男性が安楽椅子探偵となり、事件を解決して行きます。私はビリヤードは全くの門外漢なのですが、色々なビリヤード用語に合わせて事件を解決する様が面白かったです。只、ビリヤード店店長の世界チャンピオンの影が非常に薄く、キャラを生かし切れていないと感じました。てっきり作者は男性だとおもっていましたが、解説を読んで女性であることにびっくりしました。2024/05/03
Yuki
28
レトロなビリヤード場が舞台の連作短編集。語り手でもあるアルバイトの中央(あたり・あきら)くんがオーナーの英先生やお喋りな常連客と会話をしながら店に飛び込んできた謎を解く。第一話「バンキング」の謎が小ネタでどうなることかと思ったが、第三話「テケテケ」が良作。ミステリとしては目新しくないが、ビリヤード場という舞台をうまく絡めたのと会話で読ませるタイプか。温和な主人公が「ナカちゃん」「チュウちゃん」「チューオー」と正しく呼ばれないあたり、動物のお医者さん的な雰囲気。著者はどうもそういう世代の女性のようで、納得。2018/04/02
おうつき
17
ビリヤード場を舞台に個性豊かな常連客と従業員達が謎に挑む連作短編。ライトな読み口でどの話もそれなりに楽しむことができたのだが、物足りなさはある。エピソードによってはビリヤードの要素と謎解きの絡ませ方がやや強引で不自然になっている部分があったり、解決編で長々と説明的過ぎる文章が続いたりと、気になる部分も多々あった。黒後家蜘蛛形式の作品を期待して読み始めたのだが、その部分でもがっかり感があった。2024/03/12
きょん
14
現代日本の「黒後家蜘蛛の会」のキャッチコピーにぴったりな品良く纏まりの良い連作短編集。キャラ立ちした常連客達の推理合戦とビリヤードの技から閃く央君の推理も楽しかった。2018/03/10
トリプルアクセル
10
第24回鮎川哲也賞受賞作。ビリヤードと謎解きを絡めた作品だが、乖離することなく上手く融合しており、ビリヤードの知識が事件の解決に繋がる点が見事。地味だけどすごく丁寧に書かれている本格ミステリ。2018/08/29