内容説明
鞍馬民雄(くらまたみお)は東京大空襲で母親、弟と生き別れた。父親も戦争で行方知れずとなっており、奇跡的に残った自宅の防空壕でひとり、家族を待ち続けることを決意。しかし、民雄のもとには、家を奪おうとする孤児、人さらい、狡(ずる)い大人などがいつしか集うようになり……。まだ幼い民雄は、戦争の爪痕が残る東京で生き残ることはできるのか。GHQが日本を占領する過酷な時代を描く戦争孤児文学。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さんつきくん
4
戦争孤児の話し。主人公の民雄は東京大空襲で家を失くし、家族は行方不明になった。最初は親戚宅や学童疎開先の千葉にいたが、やがて実家があった場所に戻る。焼け野原の東京。実家跡には堅牢な造りの防空壕があって、そこで住み、行方不明の家族を待っていた。やがて終戦。他の浮浪児や愚連隊が民雄の土地を狙い、民雄を力でねじ伏せ家来にしようとするが、民雄は戦い続ける。上野の闇市の様子、地下道に溢れる浮浪児や復員兵などの描写は興味深く読めた。序盤に出てきた糸井が、終盤どう絡んでくるのかが気になって読み進めた。2024/02/23
Iwasa Akiko
2
戦災孤児の悲しい話。親も兄弟も、戦争で逃げ惑う中離れ離れになり、死んだところをはっきり見てないから死んだとも割り切れず、子供一人で生き残ってしまったら、どうやって生きていけばいいのか…大人でさえ自分一人のことで精一杯、社会インフラも壊滅して頼れない…。大人に騙され、子供同士も騙し騙され、生き抜くためには、善悪も二の次。逞しく賢く生きていた民雄君のあまりに哀れな最後が切ない。父親は、家族を守るために防空壕を作っていて欲しかった。立場上、しょうがなかったんだろうけど。2018/04/13