憎しみに抗って――不純なものへの賛歌

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憎しみに抗って――不純なものへの賛歌

  • ISBN:9784622086703

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内容説明

なぜ憎しみを公然と言うことが普通になったのだろう。難民政策に揺れるドイツでベストセラーとなった、世界を知るための基本書。

人種主義、ファナティズム、民主主義への敵意――ますます分極化する社会で、集団的な憎しみが高まっている。なぜ憎しみを公然と言うことが、普通のことになったのだろう。
多くの難民を受け入れてきたドイツでも、それは例外ではない。2016年には、難民の乗ったバスを群集が取り囲んで罵声を浴びせ、立ち往生させる事件が起こった。それまでのドイツではありえなかったこの事件は、社会に潜む亀裂をあらわにした。自分たちの「基準」にあてはまらない、
立場の弱い者への嫌悪、そうした者たちを攻撃してもかまわないという了解。この憎しみの奔流に飲み込まれないためには、どうしたらいいだろう。
憎しみは、何もないところからは生まれない。いま大切なのは、憎しみの歴史に新たなページを加えることではなく、基準から外れたとしても幸せに生きていく可能性をつくることではないだろうか。
著者カロリン・エムケはドイツのジャーナリスト。自分とは「違う」存在を作りだして攻撃するという、世界的に蔓延する感情にまっすぐに向き合った本書は、危機に揺れるドイツでベストセラーになった、いまの世界を読むための必読書。

目次

はじめに
1 可視‐不可視

希望
懸念
憎しみと蔑視 1 特定の集団に対する非人間的行為(クラウスニッツ)
憎しみと蔑視 2 組織的人種差別(スタテンアイランド)
2 均一‐自然‐純粋
均一
根源的/自然
純粋
3 不純なものへの賛歌
原註
訳者あとがき

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

どんぐり

69
多くの難民を受け入れてきたドイツ。テロ事件が起こるたびに、難民への圧力と抗議が高まる。難民対自国民、イスラム教徒対キリスト教徒、パレスチナ対イスラエル、二項対立で考えると、どうしても世界は分断しているととらえられる。ある特定のグループを「異質」な存在と見なし、憎しみを増幅させるのはいったいどこから来るのか。不気味で、忌まわしく、危険な集団と見立て、烙印を押し、レッテルを張る知覚パターンはどのようにつくり出されるのかを考察したのが本書である。憎しみに抗うために何をすべきか、その処方箋も提示している。「ルサン2018/05/17

かもめ通信

28
翻訳新刊が出たことをきっかけに再読。何度読んでもスゴい本だ。世界のあちこちで起きていることはもちろん、自分の身近で起きているあれこれについても、それはおかしい、それは間違っていると思うことは多い。私自身そう思った時点でできるだけ声を上げるよう心がけてもいるつもりだが、思いばかりが先走ってなかなか説得力を持つまとまった話ができない場面もまた多い。この本はそんな私を励ましてくれる本でもある。2019/12/11

くさてる

27
「憎しみとは不明瞭なものだ。明瞭にものを見ようとすれば、うまく憎むことができなくなる」。人種差別、移民排斥、IS、性的マイノリティ排除など、ドイツのジャーナリストが語る、集団的な憎しみのメカニズムについての考察。自分とは「違う」存在を創り出して攻撃する流れにどうやって抗うべきなのか。警官にのしかかられて「息ができない」と繰り返し、やがて絶命した黒人男性の実話につい先日起きたばかりの事件のことがなぜ、と思った瞬間、こういうことが繰り返されてきたのだという事実に思い当たった。いまこのときに、おすすめの一冊。2020/06/13

ケイトKATE

23
他者への集団的な憎しみにあるものは何か、憎しみを乗り越えるには何が必要か。この問題にカロリン・エムケは真正面から向き合っている。憎しみが起きる原因は、異質なものと遭遇したことからの懸念と不安、嫌悪を抱くことから始まる。そして「我々」と「他者」の二極化、やがて「敵」か「味方」という形へと変化し、社会の純粋性の維持と均一化を図るために異質なものへの排除と向かっていく。エムケは憎しみを乗り越えるためには、人間一人ひとりの多様性を認め個性を尊重すること。2019/11/28

yamahiko

22
ゆっくり、自分自身に問いかけながら読みすすめた一冊でした。想像する力が奪われないうちに、憎しみが生まれる構造を直視し粘り強く対話を重ねながら、行動すしたい。2018/06/24

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