内容説明
小田原の北条氏を滅ぼし、天下統一の総仕上げとして奥州北端の九戸城を囲んだ秀吉軍。その兵力はなんと15万。わずか3千の城兵を相手に何故かほどの大軍を擁するのか。その真意に気づいた城主九戸政実は、秀吉軍の謀略を逆手に取り罠をしかける。あとは雪深い冬を待つのみ――。跳梁する間者、飛び交う密書、疑心暗鬼、そして裏切り。戦国最後にして最大の謀略「奥州仕置き」を描く歴史長編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あさひ@WAKABA NO MIDORI TO...
104
豊臣秀吉全国制覇の最終章、奥州の仕置きにおける九戸政実四兄弟との戦いを描いた作品。奥州の人々を朝鮮出兵のための道具と考える豊臣政権に対して、自分の命に代えてでも奥州の民そして義を守ろうとする政実の生きざまは清々しい。全て読み終えた後、改めて序章を見て、してやったりという政実の死しての笑いがとても印象的。安部作品らしい淡々とした筆致は逆に深い味わいを与えてくれているし、構成も見事と言うほかないです。2018/08/18
びす男
85
戦は、決して勝つことが全てではない。朝鮮派兵に向けた「人狩り」を画策する秀吉の前に立ちはだかった、九戸4兄弟の物語■籠城方はわずか3千だが、15万の敵は付け入る隙も大きい。九戸は地形を使って相手を翻弄し、時機を待った■「喉に刺さった小骨」となった彼らの目的は、人狩りを断念させること。城を囲んだ敵に迫る冬の足音が、彼らに味方した。間一髪の潮時を見、首と引き換えに和議を結んだ■「勝つことができぬなら、誰かが犠牲となって大きな成果を勝ち取るしかない」。その成果が、三成に歯がみさせたのだ。東北武士の一分を見た。2017/12/19
レアル
58
高橋克彦氏の『天を衝く』を読んだので、同じ物語を描くこの物語も読む事に!『天を衝く』は東北蝦夷物語としての蝦夷側視点の物語に対して、こちらは時代の流れと共に秀吉と政実の両視点で読めた事。そしてまた長きにわたる蝦夷の歴史がサラッとではあるが読めた事も、高橋克彦氏の「東北シリーズ」の復習をさせて頂いているようで楽しかった。同じ物語でも描く作家さんによってニュアンスが変わってくるのも両作品を読む醍醐味かな。こちらも良い物語だった。2018/10/22
てつ
49
不覚にも九戸政実の乱の概略すら知らなかった。戦国時代のそれも周縁部にはこうした逸話はたくさんあるのだろう。面白かった。2019/01/26
如水
44
未だに謎が多い秀吉の『奥州仕置き』からの『九戸政実の乱』にスポットを当てた話です。確か作者がテレビで『隠された歴史』と言ってたのを思い出したので読もうかと。何故一地方の乱に15万の大軍を送ったのか?そして九戸城の攻防が何故3日で終わったのか?威武鎮圧が上手くいったから…だけでは納得いかない所に著者が大胆な仮説を立て物語としてます。この『仮説』の内容が凄いし面白い?…ただ史実としての結果を「其処までイジる?」と言う内容でしたが?後、解説。なんか読者を別のベクトルに向けようとしてる?と思った。2018/10/22