講談社学術文庫<br> 『青色本』を掘り崩す――ウィトゲンシュタインの誤診

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講談社学術文庫
『青色本』を掘り崩す――ウィトゲンシュタインの誤診

  • 著者名:永井均【著】
  • 価格 ¥1,210(本体¥1,100)
  • 講談社(2018/02発売)
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  • ISBN:9784062924498

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内容説明

「私は他者の痛みを感じることはできない」――このことを出発点として展開されるウィトゲンシュタイン『青色本』の思索を、著者が細部にわたって、詳細に検討。「独我論」とは、いったい何なのか? 哲学的に思考する醍醐味満載の一冊!

目次

はじめに
1 哲学における達成とは
2 私的体験が素材となって実在が構成されていると言いたい誘惑
3 語は対比項なしには使われえないか
4 ただ私自身の体験だけが実在すると言いたい誘惑
5 だが他人も「まったく同じこと」が言える
6 世界の素材としてのエーテル状の私的体験
7 ウィトゲンシュタイン的独我論
8 ウィトゲンシュタイン的独我論の永井的拡張(付・コウモリだったらどんなかな)
9 私と世界をつなぐすべての出発点
10 「自分の感覚を記述するのに回り道をせざるをえない」
11 安倍晋三の目のまわりの黒あざの絵は実物の黒あざと照合できる
12 「このゲームにゴールはない」
13 私と他人が身体の部分を共有した場合
14 二冊の本は同じ色であることができない
15 私が痛いとき私はそれを知っている
16 私は彼の痛みを文法的に感じることができない
17 文法に対する不満?
18 「無意識的な考え」という表現
19 日常言語に対する不満vs.言語そのものからの余剰
20 自痛み─他痛みvs.実痛み─虚痛み
21 「この紙はあこくない」
22 「私の頭を彼の頭の中に突き刺して……」
23 独我論と記憶──偶丸奇森の思考実験
24 幾何学的な目と幾何学的な記憶
25 「つねに」と「いつであれ」、そして独今論との類比
26 「用は足りる」が「理解できてはならない」
27 「白のキングに紙の冠をかぶせる」
28 「歩きながら周りを見まわすときには……」
29 「私」の客体用法と主体用法
30 個々の身体に口がついていることの意義
31 痛みを感じている人は口から泣き声を出している人か?
32 表出説を使用説につなぐ
33 感覚与件は存在するか
34 独我論的指示の構造
35 「文字盤を針に固定して一緒に回るようにしてしまった」
36 二つの思考が拮抗している
37 「私はここにいる」という形而上学的驚き
38 今だ!
39 身体は痛みを感じうるか
40 心という観念の起源

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

へくとぱすかる

38
累進構造、それとも無限後退か。私という存在が世界の特異点であるために生じる問題はすごく難しい。読み終わるのにも、やはりそれなりに日数がかかってしまった。本当は私の独我論は理解されてはいけないのだが、語られ、読まれて理解される。にもかかわらず、その理解はつねに一段ずれる……。あっと思ったのは永井先生が、読者の存在を念頭にして書いている部分だった。「~にとっては」と「端的に」の違いは、決して埋まらないにもかかわらず、読んで理解(するしかない、してしまえる)というのは、一層私の特異さを際立たせるものだろう。2018/03/03

ころこ

35
『青色本』の後半を40個に分けて、著者がコメンタリーを付しています。ウィトゲンシュタインの哲学というよりも、やはり本書も著者の哲学が探究されています。著者の『ウィトゲンシュタイン入門』の19ページに『青色本』の本書でいう26の一節が引用されています。そこでいわれているのは、重要なのは「私」でもない、「ウィトゲンシュタイン」でもない、<私>の独我論だということです。さらに重要なのは、このことを「誰も理解できないのでなければならない」といっていることです。他方で、現に書かれているこのことを何故だか読者が理解し2019/01/21

またの名

11
安倍晋三であるとはどのようなことかと有名な哲学書のもじりネタで「私の身体が安倍のあの身体になることは全く不可能だし、私が安倍になることは不可能」等と真面目に論じるので頭に入って来ない。ヴィトゲンシュタインを読みつつヴィトの目指した治療としての哲学が誤りだったと結論し「そういう意味でははっきりと悪質な詐欺文章」とも言う。問われている著者の絶対的な孤独とねじれを抱えた独断論に対しては個人的に共鳴する部分が少ないけれど、真剣な独我論はどんな他者ともシェアできないのならば、唯物論や敬虔な信仰と馴れ合えなくて当然。2019/06/21

たかひろ

3
始まりは理由もなしに端的に存在してしまったこの「私」であることは分かる。それが他に類比項を持たない例外的な存在であることも分かる。しかしではなぜ、その「私」が世界の全てではなく、同じように自らを私と呼ぶ他のものを「私」から切り離すことができるようになったのか。最も原初的な独我論者ならば、「私が痛い」という時それは「世界が痛い」のであるのと変わらないと思うが、なぜそこから私と他者という架空の類比項を生み出すことに成功した(あるいは成功し得る)のだろうか。本書に書いてあったかもしれないが、読解できなかった。2020/07/11

ポルターガイスト

3
面白かった。けど後には何も残らず空洞のようなものだけが胸のうちにぽっかりできた感じがする。ウィトゲンシュタインは思想が怖いというよりただただ哲学という運動に身を任せている「純粋」な感じが不気味だとと感じるが筆者にも同じものを感じる。そこが好き。内容的には文法の問題で独我論を片付けようとするところにどうしても納得がいかなかったのでそれを考える力のない僕の代わりに言ってもらえてちょっとすっきりした。2019/10/09

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