内容説明
敗戦直後の、あらゆる価値が崩壊したかに見えた世相にあって、徳田球一と志賀義雄の「獄中十八年、非転向」がどれほど眩しく見えたか。それは多くの若者や文学者が続々と入党したことからも明らかです。共産主義者としての来し方を述べた本書は、親しみやすい語り口もあってベストセラーとなりました。多分に政治的文書であると同時に、ある時代の息吹を伝えるすぐれた文学的回想として文芸文庫に収録するゆえんです。
目次
まえがき
徳田球一篇
小さな正義派
親孝行でとおる
小学校で最初のストライキ
七高生から代用教員
郡役所書記
ふたたび東京へ
米騒動に参加
司法官試補の二ヵ月
弁護士時代
日本共産党を組織
労働戦線統一と第二回党大会
早大の反軍教闘争
少年シンパ
市ケ谷でむかえた大震災
勉強室としての監獄
長老連の解党論と党の強化
三・一五に捕わる
佐野学らの裏切り
公判闘争
網走──氷のこんぺいとう
監獄領地の農業
監獄の花
お針と糸つむぎ
侵略戦争反対のたたかい
しいたげられているものがもっともよく理解する
親切な囚人たち
獄死した同志のことども
獄中の読書
お天気てんぐになるまで
千葉、小菅、豊多摩、府中
終戦の前後
むすび
志賀義雄篇
おいたち
中学生で米騒動に参加
一高入学──学生運動へ
三・一五
牢獄は革命家の試金石
はがねは鍛えられてできる
解党派まず屈服
公判闘争
佐野学らのうらぎり
こおりのなかで
サケ網をすく
トビとカラス
監獄の四季
戦争と監獄と坊主と
七年ぶりの春かぜ
アサリ汁と手錠
佐野、鍋山にあう
予防拘禁所
空襲下に
「人民管理」は拘禁所でうまれた
自由の扉
解説 鳥羽耕史
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
BLACK無糖好き
13
徳田球一と志賀義雄が戦後、時事通信の記者に向けて語った談話をまとめたもの。夫々の生い立ちと日本共産党での活動、治安維持法と三・一五検挙、獄中生活、終戦後の解放までを淡々と述べている。収監期間中、徳田が網走、志賀が函館に夫々7年程移されるが、さすがに北の地での獄中生活は相当堪えるようだ。転向する事なく信念を貫き通す精神力には感心する。◆巻末の鳥羽耕史氏の解説「戦後の共産党・獄中記ブームと『獄中十八年』」は、この時代の空気感を鮮やかに映し出すと共に、現代社会との関連も見事に射抜いている。2018/02/24
gtn
10
思想は違えど、獄中十八年貫き通した事実は厳粛である。一方、佐野学、鍋山貞親、三田村四郎、高橋貞樹 は、獄から出たいばかりに転向し、党の敵に回った。裏切者のレッテルは永遠に剥がれない。2018/12/25
sakesage
3
圧倒的に暗いイメージをもつ獄中というものを、圧倒的なユーモアで綴る彼らの楽天性はどこから生まれるのだろうか。あの戦前という最中に、日本の戦争が敗北する。独ソ戦は、ソ連が勝利すると皆から狂気じみた目線を送られながらも堅持し続けた。1940年、釈放となると思いきや、予防拘禁として、さらに自由を奪われついに敗戦後10月10日に出獄。読後知人のウズベク人のボーイフレンドが入管に捕まったと連絡あり。徳田の「監獄も社会も結局おなじ」という結びを改めて思った。2024/06/30
emi kei
0
転向した人の著作も読んでみたくなった。2024/04/11