内容説明
真面目で融通がきかない検地方小役人、江藤仁三郎。小役人の家の出で、容姿も平凡な小夜。見合いで出会った二人の日常は、淡々としていて、けれど確かな夫婦の絆がそこにある――。ただただ真面目で朴訥とした夫婦のやりとり。飾らない言葉の端々に滲む互いへの想い。涙が滲む感動時代小説。第4回アルファポリス「ドリーム小説大賞」大賞受賞作品、待望の文庫化!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
真理そら
42
表題作は3人兄弟の三男の話。『笛の音』は次男の話。長男は代々家老の家柄を継いだものとして二つの物語に登場する。表題作は家柄も良く見た目も良い江藤仁三郎と横幅の広い嫁・小夜の質素で淡々とした日常が描かれている。その日常が壊れた時、その幸せと哀しみがひたひたと読者の胸に押し寄せてくる。『笛の音』は江藤信次郎と殿の交流が描かれていて、藩内の権力闘争の中にいながらすっとぼけたおかしさがあってこちらも良い。長男の話も読みたい気がした。同作者の『湯屋の怪異とカラクリ奇譚』も読んでみたい。2019/07/07
飛鳥
28
読後、素敵で心温かくなる余韻の残る小説でした。表題作の夫婦のお話には切なくも心温まる二人の静かな絆に泣き、二作目の「笛の音」では、殿様の何事にも凡庸であると言われながらも気が良く、人間臭い姿にほのぼのした気分になりました。どちらのお話も凄く素敵でお気に入りの一冊がまたまた増えちゃいました。会川いちさんの本これからも楽しみに読んでいきたいです。2017/05/24
Rosemary*
22
家老家の三兄弟、家督を継ぐもの、後から生まれたため神童と呼ばれるも、生きづらさを抱える次男、政に無関係の検知役が天職という三男、それぞれの生き方。表題作の夫婦の絆、切なさも心に沁みるが、「笛の音」の主従関係も好みでした。2022/01/29
とくてる将軍
15
淡々と進んでいく物語にほんのり暖かくなり、読んだ後その余韻にいつまでも浸っていたい。時代ドラマ化してもらいたい。表題作もいいけど「笛の音」も良かった2020/11/23
ひーたろー
9
単行本で読んだけど好きなので文庫で購入。1話目は泣けるし2話目はくすりと笑える。夫婦の絆も、主従の(?)絆も楽しめる本。行間とか文字数とか隙間が広いのが気になるのでちょっと書き下ろしてほしかったかも。長兄の話とか、主従の話の続きとか読みたい。2017/06/06