内容説明
法医学の第一人者、元東京都監察医務院院長を務めた上野正彦さんが古今東西の名作に書かれた事件に迫る。
芥川龍之介『藪の中』では武士は誰にどのようにして殺害されたのか、谷崎潤一郎『鍵』で性交死ははたしてなぜ起きたのか、ポーの『マリー・ロジェエの怪事件』では、マリーは水死なのか……。
また戦後日本の事件史に特筆される二つの事件、青酸カリによる強盗大量殺人事件「帝銀事件」と旧国鉄総裁の轢死事件も残された資料から、アームチェア・ディテクティブよろしく、事件の様々な可能性を探る。
そのほか、森村誠一『精神分析殺人事件』と横溝正史『犬神家の一族』も取り上げている。
豊富な経験に裏付けられた斬新な検証と想像力が、物語の興味を一層深くしてくれる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
スイ
9
監察医の目から、フィクションや未解決のノンフィクションの殺人事件を読み解くという一風変わったもの。 なるほど、そういう見方…!と興味深かったが、やっぱりフィクションについては、私は野暮かなぁと思ってしまう(思った以上にリアルに書かれていることには驚いた)。 実際の事件についての考察が、より面白かった。2018/06/20
しーやん
3
元監察医の立場から、実際の事件のみならず、推理小説における死体についても考察。興味深く読みました。今後、小説を読む際の視点が変わりそう。2015/03/03
chobi
2
何年も前に書評で、芥川が「藪の中」で犯人を想定していなかったとは思えない。きちんと読むとそれがわかる…という主旨のものを読んだのだが、それがどの本か失念して探していた。やっと多この本かとあたりをつけて………。法医学的に証拠を元に…と、いうことだけれども。んー。んー。んー。んー。んー。んー。小説の中に入る「小説の言葉尻を…」を読んだすぐ直後にこちらを読んだのだけれども。んー。んー。話法として、うーん。 「藪の中」は「藪の中」のままで良いです。2018/05/25
タムタム
2
1回読んでみると、本を読む視点が変わるかも⁈同じ結果を出すとしても その裏には様々な視点、幾つもの推察があるのだと プロならではの大変さも味わえました。2015/06/23
鈴と空
2
小説(芥川龍之介『藪の中』やエドガー・アラン・ポー『マリー・ロジェエの怪事件』など)や帝銀事件や下山事件を法医学的に見てみよう、という一冊。「初めて知った!」ってことはそんなに多くはなかったけど、面白かった。森村誠一さんの『精神分析殺人事件』、ちょっと惹かれたけど犯人知っちゃった……。他にも題材作品にネタバレがあるのでそれは注意。2010/09/24