内容説明
翅をもたない昆虫、飛べない鳥モアの祖先、植物、カエル、トカゲ、そしてサルも―“海越えができない”はずの生きものたちの驚くべきルーツ、そして歴史生物地理学のパラダイムにいま起きつつある変革の物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かんやん
29
ダーウィンを悩ませた生物の不可解な分布。彼は陸橋説(今はない陸を渡った)を排し、海洋分散説をとる。その後、大陸移動がパラダイムとなると、分断分布説が主流となる。つまり、ゴンドワナ大陸の分裂(アフリカ、南米、オーストラリア、ニュージーランド、南極etc)により、生物相が分断され現代に至るという考え方である。その反証不能性ゆえに、海洋分散説(遠い昔に何らかの理由でたまたま種は海を越えた)を非科学的とする研究者もいた。アフリカと南米の分断により、旧世界猿と新世界猿は分かれたと考える方が常識にかなっている。2019/08/25
yyrn
9
地球規模における数千万年単位での生物分布の変化に取組む「歴史生物学」について、ダーウィンの「種の起源」(=分散説)やヴェーゲナーの大陸移動説(=分断分布説)に批判的な紹介から始まって、生物進化の分岐学の確立により、さらに様々な考えが提唱されてきたここ半世紀の動きを教えてくれる本。面白かったが、ちょっと細かすぎて『フンボルトの冒険』ほど血沸き肉躍るところまではいかなかった。たぶん、私の頭は21世紀には追い付けず、19世紀どまりなのだろう(笑)。2018/03/24
キミ兄
5
サルが大西洋を渡るスペクタクルを期待して読み始めたのだが、270ページまではダーウィン以降の種の分散をめぐる学説の紹介でかなり退屈。そして270ページからは、思ったよりもサルは大西洋を渡りそうだ、って話。スゲエぜ(笑)☆☆☆。2018/02/12
相馬
3
「生物地理学」の最新説を纏めたもの。走鳥類やナンキョクブナなどはゴンドワナ大陸由来で、それぞれの地域に残って進化したと聞いてほーと思っていた。それは極端にしても、大陸移動説が確かになった時に「分断分布」説は有力になったはずだった。ところが、DNA解析が進むと、種の分岐と大陸、島との成立時期が合わず、結局、「長距離海洋移動」説が有力なんだとか。ニュージーランドとかもそうらしい。表題のサルはもちろんカエルなども海上移動したとか。ということでなかなか興味深い本でした。2017/12/18
Satoshi Kitazawa
2
途方もない46億年の歴史の中でさまざまなドラマが繰り広げられ、生き物たちも翻弄されてきたんですね。とても面白かったです。2021/08/13