河出文庫<br> 服従の心理

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河出文庫
服従の心理

  • ISBN:9784309463698

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内容説明

権威が命令すれば、人は殺人さえ行うのか?人間の隠された本性を科学的に実証し、世界を震撼させた通称〈アイヒマン実験〉――その衝撃の実験報告。心理学史上に輝く名著の新訳決定版。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

rico

87
読みながらずっと考えてた。気軽に参加した心理学実験である人に電撃を与えることを命じられ。その人が苦痛を訴えやめてと懇願した時、私ならどうしたかと。大半が拒絶するという予想に反し、命令通りに電撃を加え続けた者多数という結果。でも当然かも。組織の命に従っただけ。その言葉の下、多くの愚行が繰り返され血が流されたことを、私たちは知っている。種、または個としての生存戦略。行為の結果に対する免責へのお墨付き。理由はあれこれ説明できても、人がそういう存在であることに向き合うしかない。これ以上過ちを繰り返さないために。2023/12/20

『よ♪』

51
ミルグラム実験──俗称アイヒマン実験。生まれつきのサイコパスなんていない。権威者から命令されると残虐な行為を容易く実行してしまうという。この状態を"エージェント状態"と呼ぶ。責任を権威者に転嫁し、結果『服従』する。実験では大多数がこれに当てはまる結果だった。時に人は、命令に従わない『非服従』という選択もする。しかし、これは私たちが期待するような道徳心からではない。見るに堪えないというストレスからの逃避が理由であり、つまりは"自分の為"だ。生まれつきのサイコパスなんていなかった。──が、結局は残念な結果だ。2022/03/19

里愛乍

47
社会心理学者の服従実験記録であり、当初はかなりの反響があったという。個人では躊躇あるいは拒否する意識を持っていたとしても、権威からの命令には従ってしまうという結果は、驚きもあるがわからなくもない。個人の責任が伴うかどうかそこで人の心理は左右される。『人殺しの心理学』を思い出した。実験による分析記録は興味深く、もう少し時間をかけて読みたいところ。さらに補遺にある批判者の意見に対する記載も面白い。世間的倫理とは一体、と考えたくなる。2020/02/03

藤月はな(灯れ松明の火)

44
社会心理学の授業でミルグラムの服従実験や監獄実験の様子を映像で見たことがある。アイヒマンの例を挙げても人間は権力によって左右された状況によって自分の行動を決めることが多い。人は他者の痛みや苦しみを自分のものとし、想像できる。だからこそ、自分が嫌がることを他者にもできない。しかし、もし、「あの人は悪い人だからどんな残虐なことをしてもいい」、「あの人のせいだから仕方ない」という題目を自ら、与えるなら?その時に人は、他者を身近に感じて想像するということを停止して従ってしまうことが多い。故に人の善意はとても、弱い2015/01/21

Miyoshi Hirotaka

34
演技で被験者を騙すドッキリ実験。人間は権威の前では個人の道徳性を失い残酷になれるという衝撃的な結果が観察された。職業、学歴、宗教、年齢による差はあるが全体的な傾向に相関しない。忠誠、規律、自己犠牲といった個人として賞賛される美徳は社会を維持する上で不可欠の要素。一方、個人を組織構造に埋め込むと新しい生物となり、権威からの懲罰しか気にかけなくなる。さらに、服従の限界はない。悪意あるシステムの場合、個人の美徳は無制限で破壊的な行動に結びつく。人権や環境を標榜しながら真逆のことが行われるのもこのメカニズム。2024/02/13

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