内容説明
日本人が今では当たり前の存在として受け入れている「象徴天皇」。それは、「戦犯」と「現人神」の間で揺れ動いていた天皇の存在を、戦後社会の中に正しく位置づけるべく、関係者が苦心して「血肉化」した結果だった。戦後巡幸、欧米歴訪、沖縄への関与、そして続く鎮魂の旅──。これまで明かされなかった秘蔵資料と独自取材によって、二代の天皇と日本社会の関わりを描いた戦後70年史。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
hatayan
43
2015年に放映されたNHKスペシャルを書籍化。昭和天皇は東西冷戦を冷静に見つめ、核廃絶の理想を追い求めながらも米国の核の傘に安全保障を委ねる現実を認識していました。日本人が「象徴」という言葉を使い始めたのは戦後からで、天皇の地位を代表でもなく象徴と曖昧に表現したからこそ、天皇は先の戦争を含め過去の歴史を再度背負うことになったとします。そして、平成の皇室は親しみある天皇という新たな天皇像を形作ることに成功。あとがきで「天皇の役割は、合理的なものの間を豊かに埋め尽くしていく非合理性にこそある」と総括します。2020/03/16
いの
16
この本は2015年に放送されたNHKスペシャルを書籍にしたものです。敗戦後新憲法が誕生し天皇は「象徴」と位置づけられました。天皇の在りかたに変化を求められ今に至っています。なぜ「象徴」なのか周囲の声をあげながら詳しくそして激することなく書かれていました。そして国民の意識はどう変わっていくのか。この本を読むにあたり忘れてはならない悲惨な過去に対し自分の思いや考えを巡らす結果となりました。昭和から平成そして新しい時代が目の前となりこれからの「象徴」天皇がどう引き継がれていくのか私は楽しみでもあります。2019/03/31
梅干を食べながら散歩をするのが好き「寝物語」
7
戦後70年の歴史の中で象徴天皇はどのように歩んできたのか、平和憲法の守護者としての明仁天皇の姿、沖縄と天皇の関係…この様な事を理解するための入門書として良い本だと思う。また、上記の事柄に関係のある人物を探り直接取材しているのがNHKの凄いところである。歴史的な証言は史料としての価値があるだろう。この本から、保坂正康氏や所功氏、原武史氏らの天皇関係のノンフィクションに入っていくと、人間としての天皇や天皇史への理解がより深まるだろう。( kindleで読了)2019/05/15
サイド
5
現在の「象徴天皇制」がどのような経緯で形成されたのか、そして象徴とは何なのか。NHKが取材を重ねて制作した番組からの1冊。敗戦後に天皇が処刑や処罰される可能性があったことは衝撃で、その後象徴天皇制が敷かれるまでの各国の思惑は興味深かった。 天皇様は、象徴という言葉の曖昧さ故に苦しんだ部分も大きかったのではないかと思う。自分がもし同じ立場だったら、とても勤め上げられるとは思えない。過去に最も囚われ向き合いながら、平和な世の中にするために時代の先頭を走る天皇様に敬意を表する。2019/08/24
まさにい
5
読み友さんの影響で、面白そうなので購入。憲法の章に国民主権という章はなく、第一章は天皇。そこで天皇を象徴としている。僕は天皇制と天皇とは別のものであると認識している。万世一系という根拠(日本の統治はいつも天皇がかかわっていた、とでも訳した方が分かりやすいが)に基づく象徴としての天皇制は、憲法という封印により、それを利用して悪事を働くのを防止するためと認識している。しかし、人間個人としての天皇は、象徴であろうとして、努力していると思う。その姿勢には頭が下がる思いだ。この本は人間としての天皇を書いている。2019/06/18
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