内容説明
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一人の男がひょんなことから、わずかな燃料で膨大なエネルギーを放出する画期的な器械「カルブラートル」を発明した。だがこの器械はエネルギーだけでなく、あらゆる物質に封印された「絶対=神」をも解放してしまう恐ろしい器械だった。やがて目に見えない絶対が世界中に溢れ、人々を未曾有の混乱に陥れる-『ロボット』『山椒魚戦争』の作者による傑作SF長編。兄ヨゼフによる挿絵付。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アナーキー靴下
86
お気に入りの方のレビューを見て、初めて本作を知り読んだ。何これ凄い! チャペックの最高傑作じゃない? ってなるほど序盤は楽しくて仕方なかったけれど、中盤以降は何ともまとまりがないような。ただ、これはチャペックが伝えたいことを書きたい人であって、完成された物語を書きたいわけではなかった、ということなのかな、なんて思う。人間は不完全で悪癖だらけで、だから綺麗な物語になんか仕上げようがないけれど、でもそれでも常に希望を忘れないように。鋭い皮肉と風刺に埋め尽くされながらも一筋の光が差しているような作品だった。2022/09/29
まりお
40
とある技術者が作った、少ない燃料で膨大なエネルギーを得られる「カルブラートル」。しかし得られるのはエネルギーだけでなく、「絶対」と呼ばれる神そのものも解放するのだ。そして絶対を浴びた人間は、まるで聖人にでもなった振る舞いをし始める。これだけで終われば平和だったのだが、この世界にはありとあらゆる宗教と神様がいる。神を得たことで戦争が起きるとは、いつの時代も変わらないものだ。そんな時代も、そんなことあったな、で終わるのも人らしいと言うか。2017/08/20
ビイーン
36
膨大なエネルギーを生み出す画期的な器械「カルブラートル」から副産物として開放された「絶対=人造神」は、世界中に溢れて人類を混乱に陥れ戦争が勃発する。この独創性からスピノザの汎神論みたいなものに繋がっていくところがとても面白いと思うが、これはチャペックの代表作の中でも失敗作と言われている。本書が発刊されてから100年近くになるが、世界は変わらず自分の信ずる「絶対」に囚われ争い血を流す。人間が不寛容である限り作者が訴えた意義は失わないだろう。2018/10/27
KI
28
この世界に絶対など絶対に存在しない、なんてことは絶対にない。2019/07/10
よしじ乃輔
16
自分の真理は自分だけのもの。他人には他人の真理がある。それをどこまで寛容できるのか。そんな大きなテーマを喜劇風刺的に100年前に創作された物語。偶然、「絶対=神」をあらゆる物質から解放する発明がされ、世界に増殖し人類が大混乱となるのですが、「真理を認め合えば戦争もない」という100年前からの思考はわかっていても実現できないという現実に暗澹たる思い。2022/08/21