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内容説明
近代から古代まで遡り、駆込寺や楽市など多様な領域に、人間の本源的自由に淵源する無縁の原理の展開をよみとる。日本歴史学の流れを捉え換えた画期的名著。解説=笠松宏至
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
molysk
61
中世日本において、領主や大名などの支配や介入の及ばない場、あるいは人の集団が存在した。世俗権力との縁が切れていることから「無縁」、私有を免れていることから「公界」、これらの原理が実現した場を「楽」と称した。歴史を振り返れば、権力が「有縁」の原理を成立させたとき、対立原理として「無縁」もまた成立した。中世における「無縁」は、天皇や寺社を恃んで世俗の国家権力に抗うも、近世から近代にかけて衰退する。だが、文字・芸能・美術・宗教などの人の魂をゆるがす文化は、「無縁」の人々によって担われてきたといってもよいだろう。2024/03/03
翔亀
43
網野氏の出世作(1978)。もっと早く読めばよかった。こんなに緻密にして大胆、理論的にして情熱的だったとは。単に農民に対して職人・山人・海民・女性を称揚してるのではない。縁切寺や駆込寺から説き起こし、堺等の自治都市や楽市・楽座、墓や関の史料を丹念に読み換えて、日本史に通底する<無縁の原理>(或いは無主。所有と支配の原理に対抗)を浮かび上がらせていく。西洋の獲得した自由・平和・平等が日本にも消滅一歩手前までいったが脈々と息づいていたこと、私的所有の進展という進歩歴史観が見落としたものを提示して感動を呼ぶ。2014/07/28
サケ太
23
めっちゃ興味深い内容。中世社会のアジールについて検討した書籍。無縁、公界、楽とは何か。どこにあって どういう性質のものだったか。そこで生きていかなければならなかった人々。そこで生まれた文化。中世で生きた人々の価値観は現在にも形を変えて引き継がれている部分があるのだろう。2020/10/02
樋口佳之
19
エンガチョ」が既に子ども達の中で死語となっているだろう現代に、著者の説く無縁の根源性はどこに見いだし得るのか、むしろそちらが知りたいかも。/かつて暫くの間住んだ古の学生寮は無縁の場であったかな。当局の如何なる介入も拒絶とか言って、窓ガラスも割れ放題でゴミ袋とガムテープで塞いであったな。2017/10/15
Shin
19
何かの都市論で引用されていた本。著者も大風呂敷と云う壮大な無縁の原理は、細かな学説の機微がわからない幸せな一読者にとっては魅惑的な弁証法的世界観を描き出してくれる。無縁であることで私的所有が成り立つという背理、公権力と自由との緊張関係の間に横たわるアジールの消長過程は、マルクス史観が底流に流れる戦後史観が決めつける世界よりも色鮮やかかつ人々の活気に溢れている。無縁とアジールを一緒くたにした世界的普遍性まで行くとまぁちょっと落ち着いて、となるけど、比較人類学的テーマとして極めて魅力的。類書を探してみよう。2012/03/28