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内容説明
近代から古代まで遡り、駆込寺や楽市など多様な領域に、人間の本源的自由に淵源する無縁の原理の展開をよみとる。日本歴史学の流れを捉え換えた画期的名著。解説=笠松宏至
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おたま
67
以前読んだ『日本の歴史をよみなおす』でもそうだったが、網野善彦の中世史は、これまでもっていた歴史観を覆す。この本では、例えば「縁切り寺」に伺える、世間の定めからは切れて、自由や自治、自律、そして平和を獲得した人々が、日本の中世(平安から戦国時代にかけて)に非常に多くいたことを示している。中世というと、貴族、勃興してくる武士、そして生産は農民という構図が浮かぶが、それだけではなく、多くの非農業生産者がいた。海運業、流通業、金融、手工業から始まり、芸能民(白拍子、獅子舞等々)、山の民、墓守、にまで至る。2024/12/11
molysk
63
中世日本において、領主や大名などの支配や介入の及ばない場、あるいは人の集団が存在した。世俗権力との縁が切れていることから「無縁」、私有を免れていることから「公界」、これらの原理が実現した場を「楽」と称した。歴史を振り返れば、権力が「有縁」の原理を成立させたとき、対立原理として「無縁」もまた成立した。中世における「無縁」は、天皇や寺社を恃んで世俗の国家権力に抗うも、近世から近代にかけて衰退する。だが、文字・芸能・美術・宗教などの人の魂をゆるがす文化は、「無縁」の人々によって担われてきたといってもよいだろう。2024/03/03
翔亀
44
網野氏の出世作(1978)。もっと早く読めばよかった。こんなに緻密にして大胆、理論的にして情熱的だったとは。単に農民に対して職人・山人・海民・女性を称揚してるのではない。縁切寺や駆込寺から説き起こし、堺等の自治都市や楽市・楽座、墓や関の史料を丹念に読み換えて、日本史に通底する<無縁の原理>(或いは無主。所有と支配の原理に対抗)を浮かび上がらせていく。西洋の獲得した自由・平和・平等が日本にも消滅一歩手前までいったが脈々と息づいていたこと、私的所有の進展という進歩歴史観が見落としたものを提示して感動を呼ぶ。2014/07/28
tom
24
読友さんのコメントを読み、著者の本を手に取ることに。網野さんという歴史学者、ロマンチストだと思う。この本で熱く語られるのは、権力者が存在するなら、対抗勢力も現れる。これは世界中にある。そして対抗勢力は、権力者から「無縁」を前提にして「自由」を戦い取ったという主張だと思う。でも、読みながら思ったのは、「無縁」の中にも権力構造と序列があり、末端・下々はしがらみに絡み取られていただろうということ。人の世というもの面倒だなとも思う。戦争を経験した歴史学者のロマンを前提にした議論だと思いながら読んでしまった。2024/06/24
サケ太
24
めっちゃ興味深い内容。中世社会のアジールについて検討した書籍。無縁、公界、楽とは何か。どこにあって どういう性質のものだったか。そこで生きていかなければならなかった人々。そこで生まれた文化。中世で生きた人々の価値観は現在にも形を変えて引き継がれている部分があるのだろう。2020/10/02