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内容説明
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欧化政策、村共同体の崩壊、新しい価値観の波-。現代にも似た転換期の日本、明治後期という時代を、「先生」も「私」も「K」も、それぞれの立場で必死に生きました。その心の揺れ、やむにやまれぬ行為の中にこそ、今をより深く生きるための、思いがけない光が潜んでいます。再読・精読の至福のうちに、どうかそれに出会ってください。漱石の「こゝろ」を、私たちはこれまで、ほんとうに、読んだといえるのだろうか。
目次
はじめに-「こゝろ」の成立と構造
1 「私」の手記-ある青年の回想(「先生」と「私」の出会い
「先生」と「私」の交際
「私」の卒業
両親と「私」)
2 「先生」の遺書-明治の一知識人の生涯(「先生」の生い立ちと故郷喪失
「先生」の下宿と恋
Kについて
Kの下宿と恋
Kの自決前後
「先生」の苦悩
明治の精神と「先生」の死)
おわりに-「先生」の死後
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mukimi
71
「こころ」には謎が多い。人の生きる意味をその謎の向こうに探して何度もこの作品を読んできた。明治は儒教的厳格主義と自由個人主義のせめぎあった時代で、Kも先生もその矛盾した価値観を根強く持ち苦しんだが、語り手である私はその教訓を活かし健全なバランスで生きたであろうという希望こそ、作者がこの本を書いた意味・多くの人に読まれる理由だろう。私の疑問の多くに明快な答えはなかった。でも多くの糸口を与えてもらった。そこから先の答は私自身が人生の中でもがきながら辿り着かなければいけないのだろう。どこまでも深い。2019/09/03
ふ~@豆板醤
17
「こころ」の解釈をいろいろ知りたくて読んでみた本。実際読んでみると、論文の引用をまとめたレポートのような印象。。それぞれの章はまとまっているので、とても読みやすい。「「先生」は結婚後も自分の「裏切り」を忘れることができず、人間の罪と寂寞とを感じつつ生きながらえた」2016/08/21
大泉宗一郎
14
視点によって変化する事象や、曖昧な箇所を省き、飽くまで本文から浮かび上がる事実のみを究明するという著者の姿勢のお陰で、明瞭かつ分かりやすい解説書になっている。しかし、そのために「明治の精神」に対する言及がなかったり、その他多くの点について触れられずにいるところなど『こころ』を理解するためにはこれ一冊では不足かもしれないが、ずっと心に抱いていた「ハテナ」が「ビックリマーク」に様変わりする瞬間は、まさにミステリの大円団を読んでいるような興奮を覚えることが出来て、文学に対する興味が一層増すことができた。良書。2015/03/21
スイ
10
読みやすい一冊。 一人の著者だとどうしても、論集などに比べて偏りを感じるが、一人の意見で正解はないことを念頭に置いて読むなら興味深い。2016/12/01
shouyi.
6
高校の教科書に今でも残る定番教材『こころ』。国語の授業で殆どの小説に興味がもてなかったが、これだけは別格だった。謎の多い小説だが、この新書を読んで良いヒントをたくさんもらった。2020/10/15