内容説明
21世紀なかば、ヨーロッパ・アメリカ合衆国の実権を握る大統領夫人ニコラは、時間移送機を使いゲーリング元帥を呼び寄せるが……
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
331
タイトルの"The Simulacra"は、ここでは「人造人間」とされているが、どうもよくわからない。仮に「人造人間」であるとしても、そのアイディアが結実するのは、本書の4年後に書かれた『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』を待たねばならない。つまり、本書は多分に同人誌的な内容と構想なのである。したがって、ディックの熱烈なファンには面白くてたまらないかも知れないが、客観的に見てしまう読者には物足りないと言わざるを得ない。すなわち、語りたいことはわからなくはないが、それを表現する構成力が不十分なのだ。2018/06/19
ケイ
114
まさに宇宙、そして火星がSFの中心でありえた時代。宇宙人についての夢や想像たくましく、彼らに登場してもらってどうストーリーを調理するか…となると、この作家の腕前が冴える。なんとなく怖く不気味ながらも滑稽なこの展開は、たまに味わうには結構な珍味と言ったところか。しかし、私好みの料理ではないのだなあ。 2018/03/25
催涙雨
40
登場人物が物凄く多いうえ本筋の舵をとる主人公も不在のまま幾筋もの視点にわかれて物語が展開していくため最初は読みづらく感じる。しかしそれらは徐々に結びつきを強め、山のように盛り込まれたSF的道具立てと共に錯綜した景色を見せ始める。そもそものところ物語としての軸らしいものがないため、枝葉にあたるガジェットと群像劇めいたそれぞれの人生のクローズアップがこの作品におかれた力点なのだろう。ファースト・レディのニコルが実権を掌握した体制が敷かれている点も興味深く思う。大衆は母を求め、母を人生の指針にして生きている。2018/04/06
阿部義彦
29
うーん、全部分かったとは言わないが、分からないなりにディック特有の目眩は体験できました。とにかく登場人物が多すぎます。でも不思議に惹き込まれて、大体の位置関係だけ頭に入ればなんとなく、国家警察vsニコル側、テレキネシス、教祖、と大雑把に把握しつつ読み進めると、案の定物語の後半からは、息もつかせず、オセロゲームの如く、逆転また逆転、現実と虚構と未来時間が入り乱れて頭が酔っ払う、ディック体験が出来ました。最後は戦争になって、来たるべく未来を暗示するオープンエンディングなのかな?ガジェット満載の幕の内弁当。2018/02/25
おにく
27
ブレードランナーの新作に伴い、四ヶ月連続で刊行されている新訳版の内の三冊目です。核戦争後、合衆国市民が政府に求めたのは、強い母性を体現したファーストレディ“ニコル”による女権国家の誕生。以来50年に渡り台頭するも、その歪みは政権を揺るがす一大スキャンダルによって一気に崩壊してゆく。様々なSFガジェットが登場する世界観は荒唐無稽ですらあるのですが、20名あまりのメインキャラが絡むストーリーに引き込まれ、いずれも必然に思えてくる。ひさびさにカッコいいディック小説を堪能しました。 2017/12/08
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