内容説明
引退した元スパイ、ピーター・ギラムは、かつて所属していたイギリス情報部から緊急の呼び出しを受けた。冷戦期、作戦中に射殺された同僚の子供たちが、親の死亡原因はギラムとジョージ・スマイリーにあると訴え出たのだ。だが、スマイリーの行方は知れず……。傑作『寒い国から帰ってきたスパイ』『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』、世紀を超えた続篇!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
161
もはやスパイ小説は存在しない?東西冷戦時代はスパイ小説の格好の舞台でありえたが、今の西欧社会は本来は秘匿しておくべき情報は何でも開示要求され、個人が不利益に対しむやみに裁判を起こす。スパイ小説の代わりにアクションやヒーローが持て囃される時代だって? 君たちのいうスパイはまさかボンドじゃないだろうね。本当のスパイは目立たず、女性を大切にし、心の痛みを知る男達だ。スマイリーや彼の仲間たちのように。では、彼らの話を、今度はピーターの視点から見てみようじゃないか。これがスパイたちだ。と、ル・カレが語りかけてくる。2018/02/27
Panzer Leader
65
半世紀前の二大傑作の続編と聞いて、ただ設定をなぞっただけの出がらしのお茶みたいな出来かと思っていたが...ごめんなさい、ル・カレ先生、一瞬でも疑った私をお許しください。元々完成されてたパズルの様な緻密な両作品なのに、さらにその隙間を埋めるようなストーリー・テリングには驚嘆を覚えざるを得ない。そして時を超えて登場した人物たちの言動がまた読める喜び。それでいて複雑な物語構成・時間軸にも関わらずギラムの一人称で語られているおかげか、いつになく読みやすい。御年87歳にしてまだまだ進化しているのか、ル・カレ先生。2018/07/12
Kajitt22
50
小説『寒い国から帰ったスパイ』、そして映画でリーマスを演じたリチャード・バートンに魅せられた者としては、数十年前の素晴らしい数編には及ばないにしても、手に取らないわけにはいかない。冒頭からジョン・ル・カレらしい硬質な筆致とアイロニカルな会話で感情移入ができ、一気に読めた。鉛色のブルターニュ、ロンドン、ベルリンの描写が印象的だ。初期の傑作の亡霊を登場させるとは、これが絶筆の覚悟かと思って読んだが、後書きには新刊の情報が。老いて益々盛ん。楽しみです。2020/02/25
星落秋風五丈原
49
「ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ」「寒い国から帰ってきたスパイ」を読んでから読むべし。ちなみに映画「裏切りのサーカス」でギラムを演じたのはベネディクト・カンバーバッチ2017/12/13
ヘラジカ
37
所謂前日譚、プリクウェルに当たる作品だが、映画でも小説でもこういうのは蛇足になる場合が非常に多い(つい最近ではエルロイの『背信の都』なんかがそう)『寒い国から帰ってきた〜』が書かれてからの年月を考えると不安に思うのは当たり前だろう。しかし、これは全くの杞憂であった。正に隠されていた真実が世紀を超えた今だからこそ明かされたのだと感じるほどに、破綻のない補強の物語が作り上げられている。この歳で全盛期に劣らないほどの筆力、本当に驚くべきことだと思う。この出来ならファンも大満足なのでは?(2017・76)2017/11/22
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