内容説明
17世紀のイギリス、オランダ、フランスに相次いで誕生した東インド会社。この「史上初の株式会社」の興亡を通して、世界が大きく変貌した200年を描きだす異色作。喜望峰からインド、中国、長崎にいたる海域は、この時代に「商品」で結ばれ、世界の中心となり、人々の交流の舞台となっていた。そして、綿織物や茶、胡椒などがヨーロッパの市場を刺激して近代の扉を開き、現代に続くグローバル社会の先駆けとなったのだった。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
84
中世の経済の中心を見たようでした。17世紀に交易活動を盛んに行い、ヨーロッパ市場に権力を伸ばしていった東インド会社。世界初の株式会社として経済のグローバル化の最先端をいったのですね。東インド会社の興亡がなければ、今のグローバル株式会社の形も違っていたのかもしれません。ヨーロッパの市場の基礎と世界の変貌は経済の歴史であり、世界の歴史でもあるのですね。2017/12/05
masabi
18
【概要】東インド会社を核に海にまつわるあれこれを扱う。【感想】株式会社の走りとされる東インド会社は一企業ながら、要塞建設、貨幣鋳造権、条約締結権など一部の国家の権限を有してもいる。時に軍人や傭兵を雇い地元の統治政権や他の東インド会社と戦争もする。東インド会社の多面性、イギリス・オランダ・フランスの東インド会社の差異がわかりやすく書かれている。 2019/08/03
アメヲトコ
16
2007年単行本刊、17年文庫化。17・18世紀の東インド会社の盛衰を主軸として、海域アジア世界を横断的に捉えようとする挑戦的な一冊です。インド洋海域と東アジア海域における陸の権力の海域への関わり方の違い、東インド会社のアジア進出は当初必ずしも植民地化を意味しなかったことなどはなるほどと。現代人がついつい自明視しがちな主権国家の枠組みを問い直すうえでも示唆に富む一冊でした。2025/06/23
nagoyan
16
優。ポルトガルの「海の帝国」の挫折後、アジアに進出した蘭英仏の東インド会社の紆余曲折した足跡と、これを迎え入れた海域アジアの諸勢力。世界史教科書的な植民地支配への単線直線的な東インド会社像は明確に否定される。本国の過干渉あるいは放置。会社の利益そっちのけで私利私欲の追求に走る社員。そうした中で、長崎出島と唐人屋敷に窓口を絞り内外の截然とした区分けと貿易の徹底管理を目指した徳川政権の特異さが目立つ。他方で、蘭本国にわたってまで自分の財産と正義を守ろうとした勇敢なコルネリアのエピソードには胸熱くなる。 2021/06/17
ふぁきべ
13
16世紀から19世紀にかけての東インド会社を中心としたアジアの海の歴史についての壮大なテーマを横断的に扱う。欧州勢の第一走者はポルトガルであったが、インド貿易の独占には失敗し、国が衰えるにつれ支援が減り、オランダに主役の座を譲ることとなる。王室が中心であったポルトガルと違い、民による活動であったオランダは複数の都市の東インド会社を糾合し、オランダ東インド会社(VOC)を設立する。VOCは東南アジアの島嶼地域の貿易を独占するだけでなく、長崎の拠点も維持することに成功したため、インド・東南アジア・東アジアの→2023/02/27




