内容説明
フランスのディジョンに住む資産家ハーロウ夫人の死は、養女ベティによる毒殺である――夫人の義弟ワベルスキーがそう警察に告発したとの報が、ロンドンにある夫人の法律事務所に届く。事務所の若き弁護士フロビッシャーは事態を収拾すべく、事件を担当するパリ警視庁の名探偵アノーと接触してから現地に赴き、ベティとその友人アン、ふたりの可憐な女性と出会うのだった。“矢の家”グルネル荘で繰り広げられた名探偵と真犯人との見えざる闘いに、読者は解決編において驚嘆するであろう。文豪・福永武彦による翻訳で贈る、メースンの代表長編。/解説=杉江松恋
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ペグ
77
読もうと思ったきっかけは「サハラに舞う羽根」の作者で、福永武彦氏の訳だということ。(映画はヒース・レジャーが出ていて。) 最初から犯人に目星をつけていたものの、真相が知りたくて探偵アノーにつき従い読み進めるのだけれど、解明されていく過程がちょっと唐突だったり冗長だったりでなかなか進まずもどかしい。メイソンの時代はバークリー、ウォルポール等多彩な作家がそれぞれのスタイルで作品を描いていて興味深い。2020/01/09
吉田あや
75
資産家であるハーロウ夫人が亡くなったのは「養女ベティによる毒殺である」と夫人の義弟ワベルスキーから告発文が警察へと送り付けられたことから始まるミステリ。ワトソン役となる弁護士のフロビッシャーと、ホームズというよりはポアロの印象の強い探偵アノーの息ぴったりじゃない絶妙のコンビプレーが面白い。ほぼグルネル荘の中で展開され登場人物も少ないけれど、なかなか犯人への真相に辿り着けずじりじりとした感じも共に捜査している感覚で古典ミステリ好きにはたまらない世界観。2018/03/12
HANA
61
古典ミステリの名作を今更ながら読了。毒殺疑惑、謎めいた脅迫状といったギミックもさることながら、一番の見所は探偵とワトソンの関係。二人とも初対面でぎくしゃくしている上に、ワトソンとある登場人物の関係から対立するような場面もしばしば。あとワトソン視点から物語を眺めるために、探偵の行動に常に疑問符が付く。他のワトソン役もこういう思いなのかな。事件自体は現在の目から見ると穴もあるが、大時代で風雅に思う事も。あとメイントリックの一つを読んで、乱歩の某作品を思い出しました。流石乱歩、ああいう風に換骨奪胎してるんだ。2018/01/25
星落秋風五丈原
52
映画化された『サハラに舞う羽根』の作家によるミステリ。名探偵と凡人の相棒コンビが事件に取り組む探偵ものの王道。ジムは初対面なので、どんなにアノーの評判が良くてもジムには最初に疑いがつきまとう。ましてや、こんな物言いをするようではね。登場人物が「私、あなたには何も隠し立てしようとは思いませんわ。とても隠し切れるものではありませんもの」ちょっと‘よいしょ’しようものなら「おっしゃるとおり、要するに私はアノーですからね。アノーは天下に一人しかおりません」 とこう。2018/01/11
tokko
33
いや〜、面白かったです。「大金持ちの夫人」に「毒殺」と「探偵」と言えばアガサクリスティーを思い浮かべますが、どうやらこのアノー探偵、探偵ポアロのモデルにもなっているそうです。どうりで言動が似ていると思いました。トリック自体は超難解というわけでもなく、超簡単というわけでもなく適度にしかも読者にも親切に解明していくので読んでいて楽しいです。あんまり書くとアレなのでこの辺で終わりにします(笑)2017/11/30