内容説明
深夜2時、渋谷。少年院から出たばかりの貢は北勢会のチンピラを蹴り上げていた。そこへ止めに入った美少女、マキから、元警察官“狛犬”を紹介される。貢は、社会からはみでた「ドロップ・アウト」たちの共同体に見せられていく。だが、その狛犬を執拗に狙う北勢会・村内がいた……。セックスと暴力を通じて、人間の愛憎劇を描いた、花村ワールドの切ない愛情物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ehirano1
67
著者のいつものスタイルが出ていました。(小)悪党に哲学を語らせるとなぜかわかりやすいので不思議です(p110等)。2016/07/16
ehirano1
52
再読。気になった箇所は、「自分の人間嫌いって、じつは孤独の裏返しからきてる(p152)」、「嫉妬って喉が渇くでしょう(p154)」、「信号待ちしている暴走族みたいなもんか(p241)」、「出世してパリッとした格好するなんてのは二流だが、(p251)(p251)」、「切実であるということは、なんとなくふたりでいるということではなくて、世界にはふたりしかいない、という状況なのだ(p297)」、「禁欲的になるのは、コンプレックスさ(p373)、「愛とはなにかわかるか?自己犠牲のことだよ(p377)」2016/07/16
shishi
5
[B]花村満月はこの小説でいろんなものに反抗する人々を描いている。それに共感はするが、結果として「駄々をこねる」ことだけに終始していはいないか。フロイトとかマルクスとかポーとか出しても、結局、それらは飾りの域を出ることができず、父なき時代に生きる若者の悲劇(それが本作の重要なテーマだろう)を決して描き切れていない。結局、だれのための小説なのか。狛犬のためなのか、貢のためなのか、それとも狛犬の少女たちのためなのか。いろんなところが中途半端だが、しかし、その中途半端さが奇妙に魅力的であることは否めない。2013/08/12
Katsuto Yoshinaga
4
20年前にノベルス版として初版が刊行された当時以来の再読。著者はお気に入りの作家の一人である。とはいえ、20年も経年しており、ストーリーはうろ覚え、当時とは自身の感性も変容している中、楽しく読み進めた。文中にたびたびマルクスやらフロイトの名前が出てきて、著者独特の社会観が饒舌に語られる萬月節はやはり面白い。本作の主人公「狛犬」が相対する登場人物に向かって『青臭い』と評させるが、著者もデビュー数作目で充分『青臭い』作品である。その青臭さも微笑ましく楽しめた。2013/09/08
みかん
3
ただ吐き気のする、振るう暴力。 吐き気がするけど、震える暴力。 この違いが、花村作品の魅力。2019/08/18