内容説明
大ヒットドキュメンタリー映画『ハーブ&ドロシー アートの森の小さな巨人』の佐々木芽生監督が、同名映画の取材をもとに書き下ろしたノンフィクション。和歌山県太地町。映画『ザ・コーヴ』がアカデミー賞を受賞して以来、「くじらの町」として400年の歴史を持つこの漁師町は、シーシェパードを中心とした世界中の活動家たちから集中非難の的に。歴史・宗教・イデオロギー、自分と相容れない他者との共存は果たして可能なのか。小さな町に押し寄せた、クジラを巡る大きな衝突。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
たまきら
36
日本IWC脱退を受け、いろいろ考えていたのでこの本を読んでみた。非常に率直で、わかりやすかった。川端 裕人氏の本にも似た話が登場するが、取材者の嘘には怒りを覚える。メディアの暴力はすさまじい。影響力ははかりしれない。欧米圏に長く滞在したことがある日本人なら、クジラに関して必ず一度は意見されたことがあると思う。そして、その多くは非常に感情的で、非科学的で、動物愛に裏打ちされている。だからこそ、こちらは知識で武装する必要がある。そして、知識は裏切らない。感情的な言葉の応酬の前に、そこから始めるべきなのだ。2019/03/08
チェアー
17
意見が対立するとき、どう解決を見出すのか。それは捕鯨問題、イルカ保護問題以外でも共通、なんとも悩ましい問題だ。そもそも中立・公正という立場(意見)があるのかどうか。だが、対立したままでは事態は前に進まない。対立を保留したまま(つまり相手を憎んだり否定した気持ちを抱きながらも)でも前に進み、そこから事態を見つめ直したときに、解決策が見えることもあるのかもしれない。海外の一部の環境保護団体が、メディアにストーリーを載せることが運動になっているという指摘にはなるほどと思う。2017/10/16
遊々亭おさる
14
古からの伝統を誇りにして、鯨やイルカ漁で生活の糧を得ている人たち。かたや全ての生物の頂点に立つのは人間という世界観から進化した動物愛護の精神で捕鯨などの禁止を迫る欧米の活動家たち。互いに譲れぬ正義を掲げた彼らは和歌山県太地町で文明の衝突を起こしている。文化や宗教感の違いなどを浮き彫りにして両者の間の歩み寄りを阻む深くて長い川の存在が浮き彫りになる一冊。そして感情論からくる正義VS悪の単純な二元論に陥らないように戒めてくれる一冊でもあり。人体に蓄積された水銀が健康被害を及ぼさない謎などミステリ的な面白さも。2020/02/11
Matoka
14
確かにどこかで捕鯨は日本の伝統なんだという気持ちはあったかもしれない。昔からそれで生活してきた地域もあるし、と。でもこの本を読んで正直なところ、何が正しいことなのかわからなくなってきた。答えはないけれども、世界(外)からどう見られているのか、どう日本は説明できるのかをもっとしっかり考える必要がある。内輪の理論は通用しない。2018/06/10
こぺたろう
10
再読。イルカクジラを利用してきた町、太地町。人口3000人ほどの小さな町が、情報戦に長けた活動家達から注目されます。本件の対応方法を考えると、町長や漁師は大変だろうと思います。太地町の話は色々複雑で、時系列的を追いにくいため、本書のような取材記録は、出来事の理解をする一助となります。2021/06/01




