内容説明
21世紀中葉、近代国家が崩壊し、イスラムの脅威にさらされる人々は、謎の物質テルルに救いを求める。異形の者たちが跋扈する「新しい中世」を多様なスタイルで描く予言的長篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ころこ
44
作者の小説の中では読み易いのだろう。ポップで引用や仄めかしが散りばめられていて、それが分からないとしても、プロットごとにある程度、完結している断片によって構成されている。近未来を描いているが、ここから想起させるのは現代のロシア社会と背後にある思想だ。だが、社会や政治に問題が多い方が小説になる、というのはおかしな話だ。2025/12/10
syaori
43
50の断片として描かれるのは「恵まれ啓蒙された中世となった」近未来。ロシアは崩壊し小国家群に分かれていて、それは他国も同様のよう。ガソリン車やバイオ燃料車専用道の隣では馬車が走る世界で権力者はテルルの釘がもたらす夢や幸福に浸り、人々もささやかな願いのため高額な釘を求める。十字軍が出撃し、巨人や小人、獣人もいるグロテスクなお伽噺のような世界は、同時にグローバリズムの限界が見えつつあるような現在の近い将来の姿でもあるようで、そうならばこの素敵に悪夢的な世界はどこへ行こうとしているだろうかと考えてしまいました。2017/11/15
ヘラジカ
38
崩壊した近未来世界を50の断片から観察する。中盤以降に「テルル」や「テルリア」引いては作中の世界情勢などの説明があるが、あらすじを読まずして序盤に全体像を掴むのは非常に難しいだろう。多様な小説形式を用いて書かれているので、中には理解不能な文章もあるにはある。しかし、想像していたような混沌は表層にはなかったので、ある程度は単純に緻密なSF小説として楽しむことが出来た。初期の作品に見られるような暴力的なまでの”破壊”はないが、やはりソローキンという作家が並々ならぬ怪物であることが再認識できる洗練された一冊。2017/09/27
Vakira
33
ソローキン最新作 図書館にリクエストしてやっと蔵書して貰い、一番最初に読む。うひひ処女本だ。 設定は近未来のロシア「親衛隊士の日」っぽいが続編ではない。その世界50編もの短編。最後はジグソーパズルの様に物語りが繋がるのかと思って読んでいくと、決して繋がらない。50人それぞれの物語。巨人がいたり小人がいたり獣人間がいたり、生物科学はかなり進歩している模様。そして麻薬に似た釘アルル。頭に打ち付けると覚醒。しかし失敗して死ぬ場合もある。打ち付ける職業大工が存在する。腕が良ければ死ぬ事はない。2017/12/05
そふぃあ
22
氷三部作では「カルト」、本作では「薬物」のような反社会的事象を礼讃し崇め奉ることで逆説的にそのグロテスクさが浮き彫りにされてて。どんな話?って聞かれてもうーん、分かんない。帯通りだよ。って答えるしかないけど、相変わらず気持ち悪くて好き。あと文学ギャグも良い。22章の犬頭の犬ギャグ面白かった。逆説的なグロテスクさでいうと48ではスターリン崇拝の描写もあって、ソローキンワールド炸裂といった感じ。新作も早く邦訳出るといいな。2019/07/29
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