内容説明
「あの子を助けられるのは、あなたしかいないんです」――性犯罪や、余命の告知。男女のつらい過去を、時を遡って変える力をもつ娼婦のなぎさ。男を包み込み、女に救いの手をさしのべる、なぎさとは何者なのか。性の哀しさと愛おしさ、生きることの尊さを描き、かつてなく深い余韻を残す傑作官能小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
119
(承前)下巻に入ると男が女を救うだけでなく、救われた女の視点も加わり進んでいく。どれほど純粋な愛情も性を境に汚れてしまった男女を、なぎさとのセックスで浄化されるエピソードが哀しく切ない。やがて物語はなぎさ自身の救済に及び、そこにあの東電OL殺人事件が絡んでくる。長年週刊誌のライターだった著者は性の問題で人生を狂わされた女の姿をいろいろ見てきたはずで、その代表格である謎の死を遂げた女を小説の形で救ってやりたいと考えたのが本作の原点ではないだろうか。あまりに救いがない今日、人は聖母か聖女を求めてやまないのだ。2022/05/29
ミッフー
95
エロさだけを求めて読むのは間違い❗️生きるという事また生きようとする人を、性を通じて応援する生命の物語なのです😭過去に対する懺悔や後悔、誰もが一つ二つはあると思います🤔あの時、ああすれば良かった、あんな事言わずにこう言えば良かったとね😥でもね、現実やり直しは出来ません💦傷つけてしまった相手には申し訳ないけど、過去の失敗を教訓に同じテツは踏まないよう反省し今後生きていくのが我々の残された道✨しかし、娼婦なぎさとめぐり合うことでその事が可能になる夢のようなお話なのです🥰心洗われる官能小説なのです👍2020/07/27
鱒子
53
「救済」の官能ファンタジー。濃厚なエロスだけにとどまらない、人間描写の豊かさ。上巻では、現実もエロ 回想もエロ、なかなか お腹いっぱいでした(^◇^;) 下巻では上巻よりさらに物語が深くなり、切なくなるほどの優しさがあふれています。2018/03/03
カブ
51
上下巻1400ページ余り。娼婦なぎさの官能恋愛小説を読了。ちょっとホラーチックなお話ですが、そこに綴られているのは哀しくせつない恋物語。人間に男と女があることが哀しい。不完全だから、男と女が出会って、つながらないと新しい命が生まれない。人は不完全な部分を埋めるために自分以外の誰かを求めようとする。2017/11/08
タルシル📖ヨムノスキー
33
文庫8冊を再編集し、上下巻合わせて1520ページの大作。〝愛妻日記〟以来のピンク・重松作品。確かに官能小説。でもそこはやっぱり重松さん。上巻から続く、転落していく幼馴染の女の子を助ける勇気がなかった少年の話〝霧の中のエリカ〟そして、5年生存率20%の肺癌を宣告された男性の話〝天使の階段〟はまさに重松ワールド全開。後半は、なぜなぎさが街娼になったのかを解き明かすというミステリー要素も。そして最後に秘密が明かされ、なぎさはしっかりバトンも渡して物語が終わります。願わくはバトンを渡された彼女も救われますように。2023/05/26