内容説明
ひとはなぜ、愛するのか。身体はなぜ、もうひとつの身体を求めるのか。猥褻論、性別論、性関係論からキリスト教圏の性愛倫理とその日本的展開まで。永遠の問いを原理的に考察。解説:上野千鶴子/大澤真幸
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
青蓮
72
1回読んで途中で挫折して今回新たに挑戦。何とか読み切りましたが、私には難しかったです。「猥褻」の理論や観念から始まり、性別とは何か、性愛倫理、戦後日本で出版された性愛のテキストなどについて論じているのですが、第4章はキリスト教も絡んでくるので理解が追いつかず。ただ、性的行為、愛情表現、婚姻というものの矛盾をどうにか統合しようとして結局それが果たされずに性解放運動へと突き進んでいくのは面白く感じました。最終章はフェミニズムについて触れていてそれも興味が引くところです。2019/08/16
ころこ
40
解説を上野千鶴子が書いているように、ジェンダー論として読むこともできます。しかし、社会学としてのアカデミックな読まれ方よりも、恋愛幻想はもとよりサディズムやマゾヒズムが文学のテーマとなるように、小説を読むひとに向いているのではないかと思います。「性愛を成り立たせている作用力は、身体の相互性の至近距離では、権力よりも、そしてときに原語よりも、強力にはたらく。」著者はいつも明確にすることを目的にしていますが、本書でそれは際立ちます。性愛関係は無意識が規定している体系を描き出す構造主義そのものだともいえますし、2021/08/06
原玉幸子
18
性愛倫理では、全然頭に残らない退屈な論説箇所もありますが、私の卒論のテーマでもあった「猥褻論」や、現在でも通じる「性別論」(著者の「女性と女性以外」に関連して慌ててスラヴォイ・ジジェク『性と頓挫する絶対』のM/M+の頁を繰りました!)等は、「ふーん、成程」どころではない「へへぇー」ってひれ伏す論説で、自身の選書のエロ本的?との「不純な」動機を恥ずかしく思いました。文学的表現も直截的表現もあり、正しく事象の掘り下げを実感出来る読み物です。(論説や、ちゅうねん。)(◎2023年・夏)2023/06/10
K
7
橋爪大三郎久々に読んだ。本人も認めているが、難解な(というか密度の濃い)箇所が多数。とはいえ、「その指摘は共感するぜ」という個所もいくつかあった。第四章末において、(性も愛も実体としては存在しない、性愛の形而上学は崩壊しているという結論に至り、)こう述べる、「具体的な関係に入ろうとする男女が、性愛にまつわるニヒリズムから一線を画そうとするならば、互いの関係の内実を見極め、つきつめて、それにふさわしい性愛規範を創案して自分たちの関係に課すよりない」と(p.187)。崩壊から創出へと向かうべきかな。2024/04/21
ジエチルエーテル
3
神学的な秩序も形而上学的な構成の努力も欠けている空間に、過剰な性愛技法が移入されたところに生じる混乱、目下のわれわれを巻き込んでいるものはこれである。そこでは、正則な現象として聖化されるはずの家族が、聖化されることのない性愛をめぐる中心の欠けた空虚な祭式として営まれかけている。2019/04/05
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