ぼくらが漁師だったころ

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ぼくらが漁師だったころ

  • ISBN:9784152097149

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内容説明

ロサンゼルス・タイムズ文学賞受賞。デビュー作にしてブッカー賞最終候補に選出された傑作長篇。ナイジェリアの小さい町に暮らす四人兄弟。厳しい父が不在の隙に兄弟は学校をさぼって魚を釣りに行く。しかし川のほとりで出会った狂人は、長男が兄弟の誰かによって殺されると予言した――九歳の少年の視点で生き生きと語られる、闇と笑いに満ちた悲劇の物語

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

どんぐり

74
オビオマは、アディーチェと同じナイジェリア出身の作家。アフリカ文学のクオリティの高さに注目。少年たちが川に釣りに出かけた先で出会った狂人に「長男が兄弟の誰かによって殺される」と予言され、そこから始まる4人の兄弟に起こる悲劇的な出来事。狂人の放った言葉は毒を植え付け、兄弟のきずなといのちを奪い、母親を狂わせ、一家に不幸をもたらす。イケンナとボジャが死に、オベンベが行方をくらまし、ベンジャミンは羽を失って地に落ちた蛾となる。これは不合理なことを盲信し、不運に見舞われていく物語だ。2018/03/10

らぱん

52
気がつくとアグウ家のことばかり考えていた。各章の動物を主としたタイトルが章と直接的に繋がるのがユニークだ。9歳の少年が騙る家族の物語は平易でありながら、神と人間と運命という壮大なテーマを問いかける。厳格な父親と陽気な母親と6人の子供。大家族の中で、四男ベンは3人の兄に守られ、無邪気さと無鉄砲さを携え毎日冒険をしていた。その幸せな家族に経験せざるを得ない悲劇が起きる。家族のお互いを思う気持ちがさらなる悲劇を産む展開は胸が痛くなるが、それでも失われることのない信頼や愛情は、むしろだからこそなのだと知った。↓2019/09/02

えりか

51
蜘蛛は悲しみを背負い、蛭は憎しみに食らい付き、それを増幅させていく。狂人にかけられた恐ろしい呪いによって崩壊してゆく家族の悲しみと絶望。崩壊への道がいたたまれない。わずか10代の少年たちに襲いかかる悲惨な運命。彼らの無垢さに食らい付く蛭。それでも、兄弟の、そして家族の強い絆に救いがある。運命がどんなに残酷であっても強い絆が必ず明日へと導いてくれるのだろう。ベンが最後に良き時代の象徴のシラサギを見つけたように、ナイジェリア出身の作者の母国の明日への希望の願いも込められているように思う。2017/10/01

syaori

48
何が悪かったのか分からなくて、辛い。1990年代、ナイジェリアに暮らす一家族を見舞った悲劇の発端は、狂人の予言。どんなに抗っても運命を変えられない、ギリシア悲劇を彷彿とさせる前半部もですが、「ごく自然に暮らしていたとき」を「打ち砕かれてしまった」家族が、互いを思い合うがゆえに悪いほうへ向かっていってしまう後半部は、もどかしさと焦燥感で苦しいほどでした。それでもこの一家の崩壊の物語は、同時に普遍的な家族の愛の物語でもあって、不幸の元であり救い、苦しみの元であり希望ともなるその大きな愛にとても心打たれました。2018/07/17

おさむ

41
先日、アディーチェを読んで初めてアフリカ文学に触れたが、このオビオマの作品はさらに土着な味わい。アフリカ最大の人口を持ち、経済成長も著しいナイジェリアの歴史とある家族の歴史が重なり合う叙事詩的物語。部族間闘争や内戦など私たち日本人はあまり馴染みがないので、圧倒されてしまいます。ガルシアマルケスのマジックリアリズムにも似た呪術的かつ神話的な印象も受けます。著者は米国の大学教授で、これがデビュー作品。アメリカの素晴らしさはこうした多様性にあります。2018/01/16

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