内容説明
1941年、日米開戦に進んでいく重要な時期で起こった「ゾルゲ事件」。この「ゾルゲ事件」を丹念に調べていくと、不可解な事実が浮かびあがってきた。なぜ、重要なあの日付に違いが生じているのか? なぜ、あのとき東條内閣が生まれたのか? 構想40年。これまでの「ゾルゲ事件」の定説を覆し、もうひとつの「日米開戦の正体」を説き明かす衝撃の書!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
榊原 香織
42
暗号名ラムゼイ ゾルゲがスパイだったのは事実だけれど、極刑に当たるようなことをしたとは思えない。 近衛内閣打倒のために仕組まれた、という説を展開 印象的な眉毛だ2020/11/07
Porco
21
ゾルゲというのは、実際は大したことのないスパイだったのに、近衛首相の追い落としのために利用され、冷戦にも利用されたために、大事件として扱われているという話。そうだったのかもしれん。2018/02/10
makio37
7
所々に冗長さを感じる部分はあった。しかし、いまいち要領を得なかったゾルゲ事件について詳しく知ることが出来、読後の今は満足している。ゾルゲという「絶望的なまでに平和を愛する一人の人間」と、諜報網と呼ぶにはあまりにまとまりのないそのグループがなした仕事は、死刑に値するほどのものではなかった―近衛内閣瓦解と共産主義排除の為に「政治的に」利用された事件だった、という主張。私の中ではすでに本書の内容がゾルゲ事件の定説だ。この事件の中核の検事2名が戦後にあの砂川裁判を担当したという事実にも驚いた。2017/08/06
シノウ
6
稀代のスパイとして描かれることが多い、ゾルゲについて豊富な参考資料をもとに真実を究めようとする本書。 ゾルゲの諜報力は、新聞記者や外交官程度もしくはそれ以下であり雇い主のソ連からは見向きもされていなかったこと。ゾルゲのとった行動は、彼が受けた罰に比べて遥かに軽かった。 事件を大きくしたのは、思想検事になっていた当時の検察と、近衛内閣に近かった尾崎が、関与していたことによるスキャンダル化をめぐる反応。 戦後には冷戦期のプロパガンダとして功績が粉飾されたこと。 読み応えがあったし、視点が開けた。2020/02/05
Hiroki Nishizumi
5
ゾルゲ評価への新視点。凡人が政治的理由で高く持ち上げられているとのこと。はっきりとしたエビデンスを取得したとは言い難いが、興味深い指摘だ。そして真のキーマンであるチャーチルへの言及が少ないので、別途取りまとめる予定であるのだろうかと疑問に感じた。2020/09/07