内容説明
胤(たね)よりも腹(はら)が大事――母親が誰かに注目した「女系図」でたどると、日本史の見え方が一変する。滅亡したはずの平家は、実は今上天皇にまで平清盛の血筋を繋げる一方、源頼朝の直系子孫はほどなくして途絶えているのだ。「史上初にして唯一の女性皇太子はなぜ誕生したのか」「徳川将軍家にはなぜ女系図が作れないのか」等々、著者作成の豊富な系図をもとに、次々と歴史の謎を解き明かしていく。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さつき
67
平安時代から鎌倉時代くらいをメインに、女系図をみていきます。父子関係のみでは捉えきれない、女性達のつながり。あの人は、あの人の子孫だったんだ!というような驚きに満ちていました。本講以外に補講もあり、聖徳太子についてや、藤原頼長を中心にした院政期の男色系図など興味深いエピソードも。系図を見るのが好きなので堪能しました。2017/10/27
きみたけ
54
母親が誰かに注目した「女系図」でたどるアプローチが今までにない発想でとても興味が沸きました。女系図でみると、滅亡した平家は今上天皇にまで血筋を繋げる一方、源頼朝の直系子孫は途絶えていることが分かります。栄えているのは滅びた一族だったという衝撃の事実。 平安時代の複雑でドロドロした人間関係の話から、徳川将軍家の「強い外戚を作らない」ための大奥制度の確立まで、歴史の裏話を垣間見ることができます。2020/10/08
キムチ
54
Eテレの紫式部論の解釈で初めて知った筆者。ライフワークたる中世史論の切り口がユニーク。胤より腹〜貴族が娘の性を使い権勢をはる。外戚政治期になると自分や息子の性を使ってのして行くのが院政とは生臭い。手塚漫画「奇子」と照らし合わす説明は頷ける。百人一首の底面はこんなんかと感じ入った。義経や常磐御前の身分高いのは意外。して、その訳が頼朝の印象操作とはさらに意外。白拍子のプライドの高さは式部のそれと相俟って平安鎌倉文化を想わせる。徳川の妾腹%の高さは面白い。権力保持の手段なんだな。こんな史学も愉しい♪2019/07/22
きいち
53
「家」「氏」「姓」を考えていくうえでとてもいいタネ本。明治に儒教や欧州参考に新しく作られた家制度を古来の伝統と勘違いしてしまわないためにも。◇百人一首の歌人たちのエピソード読んでて、あれ、赤染衛門の夫と相模の夫って両方大江、それってつながってんじゃね?と、自分も一度系図づくりにトライしたことがある。それだけでもあまりのつながりぶりに驚いたのだが、専門の歴史学者が作るとそれがここまでになるとは!◇女系も血のつながり。あまり優先するのは嫌だ。なので、文学者の輩出を文化資本と育つ環境で説明する著者の姿勢に好感。2018/10/20
やいっち
52
車中で(つまり仕事での待機中に)読み始めたのだが、題名のごとく、まさに女系図でみる驚きの日本史だった。 面白いし、驚きの連続で、いっそのこと、仕事を休んで帰宅して家で最後まで読み通そうか、なんて。 でも、自重した。夜半過ぎに帰宅し、ひと眠りした後、続きを残りの140頁を一気に読み通した。2017/12/26