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内容説明
一国の今は過去を抜きに語れない。華やかに語られることが多いフランスも例外ではない。第一次大戦の激戦地では現在も、不発弾と兵士の遺体で住めない村がある。第二次大戦中のユダヤ人の強制連行への加担の事実は、その重さゆえに負い目としてフランス人の心にのしかかる。アルジェリア戦争を戦った現地兵「アルキ」への冷たい処遇は人権の国の根幹を揺るがす。それらが「悪に抵抗した少数の英雄」レジスタンスの記憶にすがりたい心情につながっている。歴史に苦悩するフランスの姿を、多くの証言から紐解くルポルタージュ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Nobuko Hashimoto
36
新聞社のフランス特派員によるルポ。関係者のインタビューが多く、貴重な記録になっている。第二次大戦よりも被害が大きかった第一次大戦時の不発弾の処理には700年かかるという。第二次大戦中のホロコーストへの荷担に関しては責任を認めるようになったが、植民地であったアルジェリアとの過去への向き合い方はそれに比して立ち遅れているという二重基準。その他、日本との意外な結びつきや、凶弾に倒れた英雄が左右両派に政治利用される現象、独との和解を進める村の取り組みなど、一冊まるごと非常に興味深かった。2019/12/25
skunk_c
26
新聞社のフランス特派員が4年間の滞在期間に取材した、20世紀の両大戦およびアルジェリア独立戦争にかかわる様々な問題が、現在に落とす影をまとめたもの。だから歴史書というよりはルポルタージュだ。第1次大戦に関しては日仏両国の友好の絆、第2次大戦については虐殺に繋がるユダヤ人移送と、それを自発的に進めたペタン将軍、さらにレジスタンスの記憶をたどる。アルジェリア戦争についてはフランス側についたアレキの運命や、ドゴールの功罪、そして現在のムスリムの置かれた苦境にまで及ぶ。写真も豊富で現代史の立体化に成功している。2017/09/17
fseigojp
20
日本における戦争のタブーは、どう追跡されているのだろう?2017/12/29
風に吹かれて
16
第一次世界大戦以降今日に繋がる戦争の記憶と今なお生々しい傷跡を追うルポ。「大戦」と言えば日本人の私たちにとっては第二次世界大戦を思い浮かべるがフランスの人々は第一次世界大戦を思うそうだ。対独戦で、第二次世界大戦で50万人に対し第一次世界大戦の時は150万人の人々が命を失った。ユダヤ人強制連行に加担した理由の一端を見る思いだ。1㎡に10トンもの弾薬が降り注ぎ人が住めない村で700年はかかるだろうと言われている不発弾処理を行っている村のことなどを知るにつけ、人間の命の軽さを歴史に教えられる思いだ。2018/05/22
ふるい
12
華やかなイメージで語られることの多いフランスだが、先の大戦による罪の意識や傷ついた人々を抱え今も苦悩しているのだと知った。ナチスに協力してユダヤ人を強制連行していたことなど、不都合な歴史に目を背けたいあまり、ごく一部の存在だったレジスタンスを過剰に英雄視するのなどうなんだろうと思うけど、誰しもが真実に向き合う強さを持つのは難しいことなのだろう。ドイツや日本など敗戦国だけが罪の意識を抱えているわけではないのだと、当たり前のことだけど改めて認識した。2017/11/23