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内容説明
【開高健ノンフィクション賞受賞後第1作!】巨大な資本の流れは、人々の暮らしをボロボロに蝕み、国家は、国境の壁をますます迫り上げる。押し出された者は、当て所もなく荒野を彷徨うのみ。――私たちの居場所はいま、どこにあるのか? シリア難民、AKB、三里塚闘争、LGBT、暴力団、新宿ゴールデン街、子ども食堂、日本赤軍、刑務所、イスラム国、釣り場……。一見バラバラな「断片」を繋ぎ合わせたとき、見たことのない地平が浮かび上がってくる。「人間」の姿を丹念に描いたこの小さな本に、私たちの生存のヒントが、隠されている! 【目次】はじめに/第一章 流浪に浮かぶ祖国/第二章 共犯者たちの秘密基地/第三章 あのころ「学舎」があった/第四章 「雑民」たちの浄化/第五章 アジールの崩壊/第六章 残された旗/第七章 食堂が紡ぐモノ/第八章 極北の「持ち場」/第九章 砂漠の団欒/第十章 異界の不文律/おわりに
目次
はじめに
第一章 流浪に浮かぶ祖国
第二章 共犯者たちの秘密基地
第三章 あのころ「学舎」があった
第四章 「雑民」たちの浄化
第五章 アジールの崩壊
第六章 残された旗
第七章 食堂が紡ぐモノ
第八章 極北の「持ち場」
第九章 砂漠の団欒
第十章 異界の不文律
おわりに
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ばんだねいっぺい
26
シリア難民、AKB、三里塚闘争、LGBT、連合赤軍、新宿ゴールデン街。田原さんが書くと、異界のように感じられる場所が日常に隣接されたリアルな場所へ変わっていく。ノンフィクションの賞をとったものも読みたい。気骨ある筆致が好み。2017/07/17
ピンガペンギン
21
1962年生まれ東京新聞の記者でもある作家の思索の記録。社会的中間団体の解体によって出てきた弊害というテーマが全体にあり、キレのある文章で読みやすかった。著者はトランスジェンダーの当事者であり、昨今のLGBTブームを冷ややかに見つめている。パートナーシップ法を当事者が2004年に議論し始めた時にはたち消えてしまったのに、今回の「ブーム」の火付け役は広告代理店であるという。オリンピックと同じかと思ってげんなりした。第5章「アジールの崩壊」一般社会と同じでヤクザの世界も格差社会になっているという。→ 2023/11/18
niki
8
勉強になった。私が行ったことのない場所、一生出会えない人たちについて教えてくれる。 AKBファンの男性は両者の関係を「ダメな大人男子とダメな少女たちの共犯関係に支えられた秘密の共同体」と語る。LGBTは巨大マーケットになると目論んだ広告代理店が最初に動いたという解説に納得した。そう。SDGsもLGBTも本来の目的からずれていて気持ちが悪いのだ。 元ヤクザの男性の話や、子ども食堂に陶酔する人々の話も興味深い。 筆者の立ち位置に敬服する。冷静に現場を見る、自分の心も俯瞰する。誰にも、自分自身にさえ流されない。2023/12/26
makio37
8
語られる10種類の「居場所」はいずれも私にとっては異界であり、知らない世界を垣間見れるのは楽しかった。特にLGBTについての章では自分の無知を思い知った。当事者の一人である著者が「理解と共生は全く別物だ。(中略)理解するのではなく、分からないことを大切にする。性は闇。それでいい。」と昨今のブームに否定的であることに驚いた。また、著者が通ったという新宿ゴールデン街の飲み屋のサロン的な場の雰囲気にも惹かれた。「精神はあたかもパンツ一枚の状態」になれる居場所は、今の自分にはない。2018/03/19
DEE
8
居場所という抽象的な考え方について書かれた本。 各章ごとにテーマが分かれているが、自宅や職場といった明確な場所でないため、想像できないものは腑に落ちない部分もある。 でもどんな人間であれ精神的な居場所は必要だと思う。 たとえその場所に日が当たらなくとも、その場所を必要としている人間が必ずいる。 居場所やいい意味での抜け道がある社会が生きやすい社会だと思うのだけれど。2017/10/23