内容説明
本書は、アメリカ大統領ハーバート・フーバーの大著『裏切られた自由』を翻訳した歴史家・渡辺惣樹氏が、同書の読みどころ紹介しつつ、新解釈の「日米戦争史」を提示する一冊です。フーバーは自身の感情を抑え、可能なかぎり「資料に語らせる」ことを心掛けて『裏切られた自由』を書き上げました。世界各国の政治指導者、また米軍の最高幹部とも直接やりとりできる立場にいたフーバーの記録について、著者は「第二次世界大戦を、この『裏切られた自由』に触れずして語ることはもはやできない」と書いています。第二次世界大戦にいたった真の原因は、じつはルーズベルト外交にあったのだという『裏切られた自由』の主張をコンパクトに手際よく紹介しながら、本書はまったく新しい第二次世界大戦像を浮かび上がらせます。原爆投下についても、米軍幹部の言葉を引用することで批判的に記述するなど、アメリカの元国家元首としては異例の記述も満載です。現代史に関心のある読者なら、文句なしに関心をもつ一冊といえます。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
えちぜんや よーた
105
文部科学省の中で日本史・世界史の教科書検定をやっている人がこの本を読んでどう思うのか感想を聞いてみたい。おそらく検定をやり直す必要があると思う。少なくとも教科書の冒頭で「この歴史観はあくまでもある一方の見方で、他の歴史観も必ず見なければならない」ぐらいのただし書きはつけておくべきだ。この本によるとF・ルーズベルト大統領は「勝てば官軍」の考え方に基づき、「穴を掘って埋めるだけ」で失敗したニューディール政策のミスを戦争で埋めたかっただけではないか。本家本元の「裏切られた自由」もちゃんと読んでおかねば。2020/01/20
まーくん
81
第二次大戦開戦時の米大統領フランクリン・ルーズベルト(FDR)に対する、選挙で敗れた一代前(第31代)のフーバー大統領による政策批判が根底にあるので、どこまで信じたら良いのか迷う所であるが、論旨は非常に説得力がある。フーバー元大統領は開戦の経緯などを徹底的に調べ上げ、大著『裏切られた自由』を著したが、彼の死去(1964)までに出版には至らなかった。その後、この著作の出版は遺族・関係者の議論の末、保留。漸く出版されたのは2011年。渡辺惣樹氏による翻訳出版が2017年。同氏による、解説・要約本が本書。⇒ 2022/04/17
kawa
31
フーバー元米大統領の大著「裏切られた自由」の訳者による解説の書。基になった書籍は1000頁超えで歴史資料からの引用等による繰返し記述も多いので、本書の方が断然読み易く、整理もつきやすい良書。日本に関わる大筋は、第2次世界大戦(ヨーロッパ戦線)に参入したい当時のルーズベルト大統領が、なかなか挑発に乗らないドイツから日本に標的を替え、数々の敵視政策を連発し、まんまと日本の暴発(真珠湾攻撃=世紀の愚策と評価)を引き出したというところ。(コメントへ)2020/10/20
ネコ虎
26
誰が第二次世界大戦を起こしたのか、ヒトラーではなく、ルーズベルトである。そしてその後ろにスターリンがいた。加藤 陽子の「それでも日本人は「戦争」を選んだ」をもじって「それでも「戦争」を選んだ」のは、日本人ではなく、アメリカであった、と。渡辺惣樹氏がフーバー元大統領の回顧録を丁寧に読み解き、ルーズベルトが如何に社会主義と親和的で、ソ連スパイの側近に唆されていたとはいえ、ソ連の為に戦争を起こし、ヨーロッパ秩序を破壊したのかを暴いていく。歴史修正主義の真骨頂をかくも明晰に示した本はないだろう。2017/09/18
勝浩1958
20
加藤陽子著『戦争まで』では「アメリカは日本に第一打を撃たせた、真珠湾攻撃のことを、ローズヴェルト大統領やハル国務長官とか、何人かは知っていた。けれども、現地の人には言わず、日本に騙し討ちさせるようにした、という見方があります。でも、これが全く嘘であることは、アメリカの国防総省が研究し続けていることからわかる。」ときっぱりと言い切っています。渡辺氏が読み解く「米国陸軍戦略研究所」のレポートとどちらが正しいのか、ますます興味が湧いてきました。さらにフーバー元大統領著『裏切られた自由』には何が書かれているのか。2017/10/15