内容説明
漢字は言葉ではない。記号である。漢字にはオトは必要ない。どの言語ででも漢字を「訓読み」できる。では、中国文明の周辺地域を含めた「漢字文化圏」とは自明のものなのか。歴史上の突厥・契丹・西夏・女真・モンゴル文字など、漢字からの自立運動は何を意味するのか。漢字を残す日本語は独自の言語であることの危機に瀕しているのか。言語学者が考察する文字と言語の関係。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
樋口佳之
29
数年前ある政治家が「アウフヘーベン」という言葉を使って、それは哲学用語の「止揚・揚棄」の事だけど、その時ドイツ大使館(だったかな)が、アウフヘーベン は「持ち上げる」という普通の会話によく使われる言葉ですよとつぶやいていて、その時かなりショックだったことを思い出しました。母語を日本語としない人々の労働に期待せざるを得ない状況、キーボード入力が大半の毎日で読めても書けないが当たり前になっている事を思い、改めて教育漢字、常用漢字を眺めましたが、筆者の主張は目指す方向としては正しいと感じました。2019/04/04
松本直哉
24
思えば教育勅語も玉音放送も漢語ばかりでほとんどの人は聞いても意味がわからない。意味を伝えるのではなく畏れで震えあがらせて支配するのが漢字。数千字覚えたことばのエリートだけにわかる字。はじめから意味が与えられた「行きどまりの字」で、思考能力を奪う。筆者の主張の軸にあるのは、ことばはエリートのものではなくみんなのもので、みんなにつかいやすくすべきだということ。褥瘡の読み書きができないだけで外国人が日本で働けない不合理。漢字に頼った結果耳で聞いてもわからない字を見なければわからない貧弱なことばになりはてた日本語2019/06/08
まると
9
旧題「漢字が日本語をほろぼす」。なるほど、漢字は言葉としてはメリットよりもデメリットの方が圧倒的に多く、それを様々な読み方をして使いこなすことが教養なんだ、日本語の良さなのだと思い込んでいた自分が何と愚かであったことか。確かに話し言葉に表意文字なんて要らない。むしろ、文章力を衰えさせ、思考を停止させるだけだ。そう言われてぐうの音も出なかった。中国周辺諸国はおろか、本家本元の中国ですら脱・漢字を進めているというのに、日本だけがそれに固執してきたなんて。常識と思っていたことが心地よく覆される、痛快な本でした。2019/09/26
いたる
4
本書の原題は『漢字が日本語をほろぼす』であり、言語学者が漢字の功罪を問うたものである。漢字は排他的で言語共同体を分断する元凶であるという主張は、退官された大御所らしく、まさに怖いものなしだ。2020/04/18
どみとる
4
明治からの漢字偏重政策が日本語をいかに不自然で不完全な言葉に変えてしまったかを論じている。一般的に表意文字は覚えるべき文字が非常に多く、漢字もヒエログリフ同様に廃れる運命かと思っていたが、日本においては特権地位を与えられた漢字がやまとことばを飲み込んでしまうらしい。かといって漢字を全排除すると今使っている便利な二字熟語に代わることばを生み出さねばならず大変だ。なお、ユーラシアに跨がるフィン・ウゴル語族をトゥラン語圏として捉え直す話は、島国に住む我々も大陸と繋がりがあったと確認できたようでちょっと嬉しい。2019/06/10
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