内容説明
サントリー文化財団が奇妙な団体に助成金を出したと話題になっている。その名も「スナック研究会」。研究題目は「日本の夜の公共圏――郊外化と人口縮減の中の社交のゆくえ」という。
スナ研のHPによると、「日本に十万軒以上もあると言われる「スナック」について、学術的な研究がまったく存在しないことに憤り」を感じて決起したという。目指す到達点は以下になる。
〈スナックは、全国津々浦々どこにでもあるが、その起源・成り立ちから現状に至るまで、およそ「研究の対象」とされたことは、いまだかつて、ただの一度もない。本研究では、社会的にはおよそ真面目な検討の対象とはされて来なかった、このスナックという「夜の公共圏」・「やわらかい公共圏」に光を当てることで、日本社会の「郊外/共同体」と「社交」のあり方を逆照射することを目指すものである。〉
調べた結果は仰天するものばかり。人工衛星による夜間平均光量データまで駆使して出てきた統計結果にメンバーも困惑するしかない……。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
おさむ
39
日本に10万軒あるとされる夜の公共圏、スナックについて、とってもまじめに研究した本。なんだけど、笑えます。そこに「濃密ななにか」があるからでしょう。前身はスタンドバー。五輪のあった1964年ごろに誕生した。圧倒的な地方文化であり、めちゃくちゃテキトーな商売。財政的に厳しい地域にはなぜかスナックが多い。選挙期間中は閑古鳥になるなどなど、トリビア満載です。オヤジの戯言と笑うなかれ。ここにいまの日本社会の真実があります(笑)2017/11/22
Akihiro Nishio
30
今は行く機会は少ないが高山にいた時には全件まわったことを思いだす。さて筆者らによると、スナックは十万店舗あると言われており、スナック、キャバレー、パブ、バーという酒類を提供する店舗のうち、ほとんどの市町村においてそのシェアは8割を超えるという。ところが、スナックについての学術的研究はないので立ち上げたとのこと。歴史、行政学、判例、文学、社会学などからスナックについて分析が行われる。興味深かったのは、女中の衰退により、妻に求める役割が社交から家政へと変化し、外部に社交の機能を求めたのではないかという考察。2017/09/07
gtn
22
居酒屋等に比べ、スナックを扱った本は極端に少ないという。一つは業態のあいまいさ、もう一つは敷居の高さにあると思う。当方もスナックに行きたい気持ちが強いが、常連客の中に入っていく勇気が出ない。2019/02/02
かやは
15
スナック研究では初とも言える学術的な一冊。スナックの経営者や通う人のことが書いてあるわけではなく、取り巻く環境や前身となる形態の歴史、果ては文化史的な面にまでにも言及している。スナックの特徴として「地域コミュニティ」「狭い空間」「客同士の会話」「カラオケ」「ママ」などがある。普通の飲食店にはない独特の魅力がある場所だ。スナックにおける重要な存在、カラオケについては今後語られるらしいので、楽しみに待ちたい。2018/03/17
てくてく
12
スナックとは何なのかということを法哲学研究者である編者を含めた法政研究者が取り組んだもの。憲法と刑法研究者が判例データベースで研究対象であるスナックを調べ始めている点が個人的には面白かった。この研究が続くのであれば、スナック経営者、スナックという空間、常連客といったところをじっくり分析してもらいたいと思った。2017/10/08




