内容説明
シミが死んだという。あの頃、シミの部屋に流れていた音楽の名前は、いまだにわからない。あそこにいた連中の行方も。でもたしかなのは、ぼくらは音楽みたいに会話を交わし、怪しいバイトに手を染め、とびきり美味いアボカドスープを飲んだってこと。だけど、シミが死んだって、本当なのだろうか――? まだ何もやり遂げていなかったけど、ぼくらは自由だった。誰もが通り過ぎてきた人生の断片を、鮮やかに、ときに痛切に、詩的文体で描き出す。オルタナティヴ文学の旗手・坂口恭平が放つ、傑作青春小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
yutaro sata
25
実体験と思われる部分、創作と思われる部分、時間の前後関係、印象がごちゃまぜになって展開し、彼であったはずの人が彼でなくなる。 なぜこの本はこのような姿なのか。それは、この本が何かのお話なのではなく、私の内部で起きたことがそのまま「記録」されたものだからだという。 脳が見せるものを忠実に記録したものである、と考えると、初めから終わりまでの動きが一貫性を持ったものに思えてくる。2023/04/16
ariel
6
最後まで理解が追いつかず必死で想像しながら読みました。 見えてる世界の裏側にはまた別の世界があって、そこでは常識になんて縛られない。 八王子はどこにでも繋がっている町。2017/06/06
kaz
5
今までこんな本は読んだことがなかった。一般的な理解を拒絶するような文脈。場面も突然切り替わるし、会話も突然脈絡なく変わる。非現実的なこともふつうに起きる。しかし全体としてひとつの世界を構築している。シミとは一体何者なのか?実は自分もシミの一部なのではないか?一部であったし、今も、これから先もふとした瞬間にシミになっているのかもしれない。全く訳の分からない小説だったが、不思議と1日で読み切ってしまった。2019/10/13
スプリント
5
正直よくわかりませんでした。途中からそういうものと割り切って読みきりましたが印象には残らず。不思議な本です。2017/06/04
純文
4
物語はない。イメージの奔流だけがある。考えると永遠に止まってしまいそうになるからただ言葉に文章に流されるようにして読む他ない。イメージは言葉や文章を超えている。読むという行為からも超えている。スピードの中で熱くなり掻き乱された。そのスピードはここにある言葉や文章を超えた、あるいは言葉や文章が把握できなかったイメージが生み出し、ぼくが読むことで加速したのか減速したのかわからない摩擦だ。2017/04/30




