内容説明
哲学はソクラテスとともに始まったと見なされてきた。だが、何も著作を残さなかったソクラテスが、なぜ最初の哲学者とされるのか。それを、彼とその弟子のプラトン、アリストテレスという3人の天才による奇跡的な達成と考える従来の哲学史観では、致命的に見落とされたものがある。ソクラテスが何者だったかをめぐり、同時代の緊張のなかで多士済々の思想家たちが繰り広げた論争から、真に哲学が形成されていく動的なプロセスだ。圧倒的な量の文献を丹念に読み解き、2400年前、古代ギリシアで哲学が生まれるその有り様を浮き彫りにした『哲学者の誕生:ソクラテスをめぐる人々』の増補改訂版。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
えとろん
18
哲学はソクラテスから始まったとされる。そしてプラトン、アリストテレスの3人の天才がギリシャ哲学を確立したと考えられてきたのを、作者の納富氏は大きく歪んだ哲学史観だとのべ、ソクラテスをめぐる人々の活動を追っている。そのさまはスリリングだ。また、いわゆる「無知の知」が訳語として誤りであることを厚く説明している。ソクラテスのみならずギリシャ哲学の起源を考えるのには格好の一冊。2024/10/13
buuupuuu
15
ソクラテスを当時の文脈に置き直す試み。彼の刑死後に出されたポリュクラテスの『ソクラテスの告発』に応えて、いわゆるソクラテス派の人々によって、様々なソクラテス弁護の論陣が張られる。プラトンの著作もこれに含まれる。当時の政治的、知的状況や、ソクラテスが裁判にかけられた事情、彼を取り巻く人々等が紹介される。中心となった問題は、クリティアスやアルキビアデスのような人達へのソクラテスの影響がどのようなものだったかということである。自分はアルキビアデスについてよく知らなかったので、なかなかスケールの大きい人で驚いた。2022/02/16
那由田 忠
15
師弟関係にある3大哲学者の巨人中心史観から、実際のソクラテスのあり様を確認する資料が少ない中で、どう推測していくのかという問題に対して、ソクラテスの死刑判決後、アテネに反省の意識が生まれる中で、ポリュクラテスの「ソクラテスの告発」という死刑弁護論が出て、それとソクラテスを擁護するソクラテス派の間に論争が始まったことと、強烈なソクラテスの対話、問答法の影響で「ソクラテス文学」が生まれてきたという状況の下で、「自然哲学」やソフィストからソクラテスの対話を弁別する意図で、プラトン哲学が西欧的哲学として現われた。2017/05/03
YO)))
11
本邦におけるソクラテス受容の「標語」となっている「無知の知」について、文献的な証拠、哲学的な考察、歴史的な経緯のあらゆる側面から「大いなる誤解」であることを論じた第六章と、"哲学者"ソクラテスをソフィストから峻別し対決を図ったのは、当時の状況・常識とは異なるプラトン独自のプログラムであったとする補論を特に興味深く読んだ。2024/11/22
いとう・しんご
10
プラトン「パイドン」きっかけ。ソクラテスが刑死したのは寡頭政治を指示したと思われたためだったとか、ソフィストVS.哲学者という観念がアテネ市民には無かったとか、史的ソクラテスについて教えてくれる本。プラトンや当時の哲学について何冊か読んだ後なら、十分に愉しめると思いました。2024/02/25
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