内容説明
武士の活躍のみが語られがちな幕末。
だが、当時の日本人の約8割は百姓身分であり、彼らの営みを見ずして、幕末という時代像は見えてこない。
本書では、1830年代~1880年代を幕末維新期ととらえ、幕末の百姓たちの衣食住から、土地と農業への想い、年貢をめぐる騒動、百姓一揆や戊辰戦争への関わり、明治になってからの百姓までを、史料に基づき微細にわかりやすく解説。
知られざる、もう一つの幕末維新史。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
てつ
62
興味深く読んだ。まずは分かりにくい古文書を読み下し文にして読みやすくしてくれたことに感謝。一般人向けということをきちんと表明してくれていてありがたい。前半は江戸時代の農民の実情、戊辰戦争に巻き込まれざるを得なかった時代を経て、地租改正へとつながる実態を述べてくれている。個人的には後半をもう少し濃く知りたがったが。良書。再読ありかな。2017/06/11
樋口佳之
31
タイトルに沿えば、百姓にとっての維新とは不幸なアクシデントとなるかな。商品経済の浸透の中で自律への成長著しかった村の変化が、あと五六十年外圧無く続いていたら全く違う近現代があったのではと妄想してしまう内容でした。2018/06/20
iwasabi47
8
複雑な土地関係を明治政府の地租改正以前に整理する幕府の動きがあったこと、松方デフレ時、秩父事件のように貧民と政府・富裕層の最終的対立ではなく、江戸ようなの交渉で解決した事案もあったことは勉強になった。2022/01/20
kawasaki
8
前半では江戸時代後期の百姓の世界を描き出し、後半では戊辰戦争(主に秋田戦争)の中に置かれた百姓が主題となる。史料(平易に現代語訳)の魅力を感じさせる、丁寧な一般向け書籍。「有名人」も出てこず華々しい維新回天の物語とも遠い、徹頭徹尾百姓に焦点を当てた民衆史で、前半で語られる百姓の力量、村の自治の在り方も興味深い。しかし、江戸後期の百姓たちにいささか親しみを覚えたところに来る後半の戦場描写は過酷で、道具立てこそ違えど現代の紛争と変わらぬ、重い印象。2017/09/08
転天堂
1
『武士に「ものいう」百姓たち』に続いて読んでみた。渡辺先生のこの著書は語り口や文書の現代語訳部分のフォントなどが読みやすく、百姓が置かれていた幕末維新の状況がありありと浮かんでくるようになっている。農業を基本としながらも百姓として様々な生業にも従事していた農民も、幕末の混乱で軍役(内戦)にまで駆り出されてしまう。そこでの柔軟さやタフさ、というのが今後の日本社会を乗り切る知恵なのかもしれない。それにしても明治に入ってからの神奈川の事例はすごい。『「舞姫」の主人公をバンカラと…』に通じるものがある。2023/04/18




