内容説明
第一次大戦中、マルセル・プルーストはライフワークの執筆をつづけていた。終息の見えない戦況を目の当たりにした彼は、長大な小説の終盤に進行中の「戦争」を取り込むことを選択した。そのとき彼はどのような問題意識を抱え、どのようにして言論界への批評的介入を試みたのか?戦争の表象をあらわす「戦争文化」という観点から、『失われた時を求めて』を読みなおし、プルーストの政治的・社会的・美学的ポジションを再定義する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Sumichika3
17
戦争文学としてプルーストを読む、という現れるべくして遂に現れた画期的な論考。第一次大戦というヨーロッパ未曾有の危機にあって総動員体制下の文化状況に臨んだプルーストが文学者として銃後の立場を選びとって、いかに自らの小説を、言わば、生成する作品たらしめていったか?その戦略的なエコノミーを、幾つかのトポスを設定して当時の言語環境との関係に即して、緻密に読み込んでいく。さらに戦争文学のモデルたるトルストイの「戦争と平和」との呼応を徵候的な読みで浮かび上がらせている点も興趣に富む。2015/09/27
gkmond
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ところどころ面白かった。結論めいたことを言わなきゃいけないって意識が透けて見えるところもちらほら。もう少し熟すのを待ってもよかったかなあ。2020/06/04