内容説明
春の御前山で思いがけず出会った、薄紅に咲きさかるカタクリの大群落。
あまりの小ささに草地に身を伏せて、ようやく所在を確かめた早池峰のチシマコザクラ。
レブンソウとの新しい出会いに、自分の命がその花に添って伸びひろがってゆくのを感じる――
山と花をこよなく愛し、日本中の山々を踏破した著者が、その豊富な山行の中から、四季折々の山と花の結びつきを100選び、歴史や自身の思い出とともに綴った珠玉のエッセイ。第32回読売文学賞〈随筆・紀行賞〉受賞作。
1980年に刊行以来、多くの山好き・花好きの間で読み継がれてきたロングセラー。NHK衛星第2TVで放映された「NHK 花の百名山」、山と溪谷社刊行「花の百名山 登山ガイド」などを生み出すことになった、元祖である。
「あれらの山々にはどんな木が茂り、どんな水が流れ、どんな花々が咲いているのか」という思いで、生涯山に登り、花を愛しつづけた著者のひたむきさ、純粋さ、喜びが、文章の端々から伝わってくる名作が、活字を大きくして待望の復刊。
解説・平尾隆弘(初代担当者・神戸外国語大学客員教授)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
62
登山をしているとその山道に咲く花々に目を止める事も多々あるが、その楽しさ美しさを思い出させてくれる一冊。紹介されている山は基本的に著者が登った山から選ばれているので東日本の山に偏っており、西日本中心に登っている自分には馴染が薄い。また惜しいのは花の名詞が沢山並べられているが、自分に素養が無い為情景が想像しづらい所かなあ。ただ登山というと登るという行為が第一義に考えられがちであるが、道端にあるささやかなものを見つける楽しみを改めて教えてくれた本でもあった。地元の山も描かれていたので、久しぶりに登りたいなあ。2017/12/13
s-kozy
43
花と山への愛が溢れる珠玉の随筆。花好きの方、山好きの方は十分楽しめるだろう。やっぱり山は一歩一歩、自分の足で踏み締めて登りたい。そして、そこにそこだけにしか咲いていない花があったら、そりゃあ愛おしいよなぁ。私たち日本人が日本の自然と四季の中で長年育んできた、美しい心と情緒。それらを後の世代へと伝えていけるようになりたいものだ。巻末の解説によれば本書に登場する花と樹木は824種とのこと。驚異的な数字だ。2017/08/12
roatsu
20
花々を求めたり、かつて繰り広げられた歴史に思いを馳せつつ行く山歩きの素晴らしさを情感豊かに読み手に伝える名随筆。著者の温かく、深いまなざしに心が動かされる。深田百名山の荘重さもいいが、個人的には志向が似ている分百名山といえば本書の方がしっくり来る。山中では意識していれば本当にたくさんの草花に出会えるが、その可憐さを愛で、山中で命を繋いできた健気な営みの積み重ねを思うことはガツガツ体を動かし頂を極める爽快さとは異なる、心豊かな楽しみを与えてくれるものである。2017/07/21
meow3
16
花の大好きな著者が選んだ花の美しい山100選。お花と言っても自生している山野草や高山植物なので見たこともない知らない植物ばかり。写真が掲載されていれば素敵なのになあ。私も天上の花々を見に行きたい。2021/11/24
やっちゃん
12
花だけでなく歴史や地質関連の話も多く、山好きでも花は詳しくない自分には嬉しかった。未踏の奥多摩や地方の低山は特に参考になった。戦前に女1人でだったり、高齢で風邪ひいてるのに登っちゃうあたり凄いパワーだなあ。2022/02/08