内容説明
アジア主義は、アジア諸国の連帯を標榜しつつ、結果として日本においては帝国主義の正当化に利用され、中国においては国内の政治・軍事目的に利用された、いわば同床異夢の「幻視」であった。本書は、第一次世界大戦前後から日中戦争期に至るまでのアジア主義の思想的展開を、宮崎滔天、孫文らとその継承者を軸に考察し、日中の政治的帰結とともにその意味を再検討する。
感想・レビュー
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BLACK無糖好き
11
明治初期から日本の敗戦に至るまでの思想としてのアジア主義の変遷と、日本と中国の間での思想的交錯の考察。宮崎滔天と頭山満の中国革命との関わり、孫文の「大アジア主義」に込めた日本ヘの期待、戴李陶による孫文思想の継承、近衛政権下での東亜共同体論、石原莞爾の東亜連盟運動、汪精衛の対日協力の思想としてのアジア主義等々。日中のアジア主義は交錯する場面もあるが元々は同床異夢の歴史であった事が改めて示される。今日政治的成果を求めるアジア主義成立の余地はないが、理念としての価値原理創出の可能性には著者同様望みを持ちたい。 2016/10/22