ちくま学芸文庫<br> 未開社会における性と抑圧

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ちくま学芸文庫
未開社会における性と抑圧

  • ISBN:9784480097750

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内容説明

「エディプス・コンプレックスはあらゆる社会に存在する」とフロイトは説いたが、マリノフスキーはこの仮説に対し民族誌的資料を駆使し、それが近代西欧の家父長制的社会特有の現象であると根底から相対化してみせた。近代的社会人類学の確立者として学説史に不朽の名を刻んだマリノフスキーが、性において人類の内なる自然と文化的力との相互作用のドラマを考察した古典的名著で、家族の起源、近親相姦の禁忌、父系制と母系制との関係等いまだ多くの示唆を与えてくれる。また、文化の概念をはじめ、彼の主要な理論、概念が展望でき、マリノフスキー理解の恰好な入門ともなっている。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

HANA

57
エディプス・コンプレックスはあらゆる社会に遍在するという説に対し、文化人類学の立場から反駁した一冊。主題である西洋の家父長制的社会に対する母権的社会という対比だけではなく、本能と文化、タブーとしての近親相姦等幅広い角度から社会と性の問題にアプローチしている。文化人類学に暗いので、現在それがどう受け止められているかはわからないけど。それにしてもフロイトの心理学黎明期とそれに関する論は、何となく神話じみたものを内包してて面白いなあ。あと心理学と文化人類学、動物学と学問分野が未分化の時期独特の面白さもあった。2017/03/14

かんやん

29
メラネシア先住民の女系社会(父親の出産に果たす役割に無知で、父は年上の友人、助言者となる。子どもは別の集落に暮らす母方のおじの財産を継ぐ)を調べてみたら、そこにはエディプス・コンプレックスはなかったよ、というだけの話ではない。原初的な集団に於ける父親殺しが、文化・宗教・タブーの起源だというようなフロイトの仮説を根本的に批判している。ある事件を機に、一挙に文化が生まれるというのは、確かに馬鹿げている。著者は、リビドーの固着やら、小児性欲といった精神分析学的概念を否定し、「本能の可塑性」について分析する。2019/02/06

松本直哉

26
生物学的父性について無知であり(なんと幸福な無知!)子は精霊のようなものによって齎されるというニューギニアの部族にとっての父は子どものよき友人であり育児の協力者。母系の兄弟が父のような役割を果たす母権制の中で人々は幸福で生き生きして見える。表紙写真から想像されるように性をめぐる抑圧やタブーはあるにしても西洋とは全く異なるものだ。このような世界で父権的なエディプス・コンプレックスが生れるはずがないのもよくわかる。フロイトへの見事な異議申し立てであり父親中心の世界観を相対化させてくれる。2018/03/14

roughfractus02

13
フロイト「トーテムとタブー」を批判し、父権社会のみならず母権社会(母方の叔父・伯父が父親の役割を果たす)の存在を強調する著者は、一方で、進化論に依拠する当時の人類学に対して、社会の機能(この場合性と抑圧の別のタイプ)を調査資料から示し、本能は固定されず可塑性を含むと主張する。フロイトはゴリラの社会と人間社会をを区別なく父権社会と捉え、父になるための競争社会が父殺しとタブーを作るとしたダーウィンの言及からエディプス・コンプレックス仮説を立てた。本書は、ゴリラと人間社会の人類学的区別から綿密な批判を展開する。2024/02/24

飯田一史

3
二〇世紀前半に影響力を持った精神分析理論に対し、メラネシアでのフィールドワークから、エディプスコンプレックスや神経症は人類普遍でなく西欧の父権社会特有のものだと覆した著。2018/12/18

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