新潮文庫<br> 楽天記

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新潮文庫
楽天記

  • 著者名:古井由吉【著】
  • 価格 ¥671(本体¥610)
  • 新潮社(2017/06発売)
  • ポイント 6pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784101185040

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内容説明

夢の中の幻の息子、旧約聖書の預言者の謎めいた言葉、死んだ旧友が繰り返していたという奇妙な仕草…うつろう折節の事どもの内に、密やかに重なりあう生と死の諸相。生涯をよろぼう人々の心に、常に在る「楽天」。老いや死への思いと共生するように暮らす作家・柿原の、そぞろに揺らめく想念を軸に、私小説的な手法を用いた自在な筆致で人間の精神を深奥へと掘り進む長編小説。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

しゅん

11
『山躁賦』が難儀した読書だったのに比べ、こちらは滑らかに読んだ。初老に差し掛かった著述家「柿原」の日々の気懈さやよろめきの感覚を綴っていく文章だが、「私」を「柿原」に強引に入れ替えたかのような、「私のいない私小説」といった趣がある。若手編集者と思われる関谷青年が絶妙な香味を漂わせている。古井由吉の文章から立ち込める気配に浸っていると、生きていくこととはすなわちこの淡い気配を確かめるだけのものではないかと思えてくる。記憶の曖昧さの中に溶け込むことの不安めいた心地よさ。そう呼んでしまったら浅はかだろうか。2019/07/03

山がち

1
「人生の色気」を読んで、ぼんやりとではあるが「息子」で疫病について語られていたことに得心が付いたような気がした。結核が死の病であると、日常的に染みついてきたのが分かるのであれば、確かに疫病は意味があるのだろう。少なくとも、私のように結核などを知らない人間とは違って。また、文章の動きも他の作品とは異なるような印象がある。「雛祭り」は極端だが、他も同様のものを感じるが、それを上手く表現することはできそうもない。それと、解説の読みがすさまじかった。その是非を判断することはできないが少なくとも必ず読んでおきたい。2013/11/22

Cell 44

1
幻想的、病的な描写、なのに「わかる」と頷いてしまいます。多様なイメージ、あるいはイメージであるところの現実の複雑さ。2011/09/20

eb

1
危うい綱渡りをしているような感覚がある。奔放な文体や時間感覚だが、全てが計算のうちに成り立ち、表立っては静かに、それでいながら奥深くの方ではめまぐるしく何かが展開している。連載中に大病を患ったという古井氏の心境、あるいは脈動をそのままに著した作品、といったところか。2010/07/15

seer78

0
筋があるような、ないような。古代ユダヤの預言者やら中世の神秘主義思想やらを、現代日本の生活にどうもちこむのか。2009/12/01

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