内容説明
「あなたのことが許せないのは、
あなたが私が愛して愛して愛してやまない娘の
身体や心を傷つけることを平気でするから」
母はそう言い続けて、最後の息を引きとった。
愛しているゆえに疎ましい――母と娘の関係は、いつの時代もこじれ気味なもの。ましてや、キャバクラや風俗、AV嬢など、「夜のオネエサン」とその母の関係は、こじれ加減に磨きがかかる。
「東京大学大学院卒、元日本経済新聞記者、キャバ嬢・AV経験あり」の著者の母は、「私はあなたが詐欺で捕まってもテロで捕まっても全力で味方するけど、AV女優になったら味方はできない」と言い続けて世を去った。
本書は、著者がそんな母を看病し、最期を看取る日々のなかで書かれたもの。自身の親子関係や、夜のオネエサンたちの家族模様を、生き生きと描き出す。
エッジが立って、キュートで、エッチで、切ない、母も父も娘も息子も必読のエッセイ26編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
FuSa
11
この母娘、ホント強烈。でもちょっと羨ましい。思えば私は母親とこんな明け透けな会話したことないな。2018/04/07
Ⓜ︎
9
「あれもしたいこれも嫌だって言ってるだけの人に世界は耳を傾けてはくれないよ?」私も高校時代、成績トップのギャルを目指してた。好きなことをするならやるべきことをやる。それで大人に文句を言わせない。著者のお母様の教育方針と私のモットーが重なる。初めて著者の作品を読んだ私には、全体的に一文が長くて読みづらく疲れてしまった。こういう世界が紛れもなく存在するのだなと社会勉強になった。2020/08/16
おはぎ
8
この母娘関係から『ギフテッド』は生まれたんだと思った。もちろんそのままパタンと写し取れるようなものでもないのだけれど、愛憎半ばする複雑な感情、赦しはあったのか…など共有する点が多い。お母さまを亡くされて、なかなか気持ちの整理がつかない部分もあったと思われるが、それを初めての小説という形で昇華しきったことを目の当たりにして凄みを感じた。相変わらずの涼美節が個人的にはとても好き。2023/01/13
JunTHR
8
前作『身体を売ったらサヨウナラ 夜のオネエサンの愛と幸福論』でも強烈な印象を残していた著者の母親。その母との関係を軸に、著者の周りの「夜のオネエサン」たちの例も交え、類を見ない独特の文体で語られる母娘論、めちゃくちゃ面白いー!各章タイトル、注に至るまで面白ーい! 親子関係や過去や曝け出すのには文筆家としては覚悟のいることだろうと思うのだが、そんなことは微塵も感じさせない文体。唯一無二。 終章「ミックスコーデの弔い」は名篇だ。 「否定しながら愛し、愛しながら許さないというのが、母の一貫した態度であった」2017/06/06
晴れ女のMoeco
6
最終章が濃厚だった。「ルーズソックスの成績優秀者」が、キャバ嬢慶應生、AV女優の東大院生...と、かっこいい。 「女を売っても、女は残り続ける」という彼女のお母様が素敵。 著者の自宅のトイレで、友人たちが妊娠検査薬を使う話もすきだし、「出産を選べた」話もよい。 もし妊娠しても、内定とか合コンとか今の楽しい生活を諦められないだと、とても正直で良い。電車の中での子どもの泣き声が苦手とか、私みたいな子ども嫌いがいたかとほっとする。 母から子どもへの愛情を知ると、子どもに寛容になれるというのもよいな。 2019/07/17