内容説明
明治の日本で、当時の常識「女は男よりも劣る」に真っ向から異を唱え、「男女平等」を公言するばかりではなく、個人としての生活でもその姿勢を貫いた福澤諭吉。彼の生涯にわたる主張「独立自尊」と、女性の地位向上はどのように結びついたのか。福澤の真意を読み解き、今もなお古びることのない「近代人」としての肖像を鮮やかに描き出す。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Olive
4
福澤先生は「日本婦人論」「女大学評論」「新女大学」などまとまった女性論がある。1世紀前に書かれたのにこの”腑に落ちる”感は何だろう。男性や社会に刷り込まれた女性観が近代化を進めるうえで必要だと考えていた。なかなか社会が、そして日本人に浸透することは出来なかった。興味深かったのは、福澤先生の論が学者たちにどのように受け入れられ、拒絶されたか。そしてその根っこが今でも、この社会でも生きているのではないかとも感じる。登録者数が少ないが多くの人に手に取って欲しいと思った一冊です。2021/03/11
壱萬参仟縁
2
女性の一身独立は、フェミニズムであるが、本著にも30ページぐらいから書いてある。スタートラインの平等をいった、J.S.ミルの『女性の隷従』が紹介されている(34ページ)。福澤先生においては、人生というものは楽しみがなければならない(48ページ)。女性の子育て支援は、富岡製糸所などへの伝習工女派遣が挙げられる(68ページ)。福澤先生は夫婦別姓のような、男女の姓から1文字ずつとって新たな姓を名乗る(95ページ)などと卓越した思想がみられる。現代日本は夫婦別姓といってから20年ぐらいは経っているのではないか。2012/11/02
メルセ・ひすい
1
15-137 男女の交際には情感の交(情交)と肉体の交(肉交)の二種類がある。二つは働きの異なるもので、どちらも「至大至重」で欠くことができない。問題であるのは、情交が肉交とセットになってしまうことで、男女の情交は「肉交に離れて独立」すべきである。しかし古人の言葉が「世教」となり、世教が「習俗」トナリ、習俗が「社会の圧制」となって男女の交際を妨げ、「近代の開明」に至っても肉交に惑わされている。 明治の常識とバトル「女性は男性に劣る」。生涯にわたり「男女平等」を公言。福澤諭吉の生涯にわたる主張を説く。2012/02/24